[Book Review 今週のラインナップ]
・『読んだ、知った、考えた 2016~2022』
・『現代ドイツ政治外交史 占領期からメルケル政権まで (Minerva Modern History 3)』
・『パンデミックを終わりにするための 新しい自由論』
・『「東京文学散歩」を歩く』
評者・本誌コラムニスト 西村豪太
会員制月刊誌『選択』に、2001年から続いている、「本に遇(あ)う」という名物コラムがある。毎回書物をテーマにしているが、書評でも読書論でもない。むしろ本を入口にした時論とでも称すべき、あまり例のない読み物だ。このコラムの16年から22年までの7年分、84本を集成したのが本書である。
インスタント教養本の対極 生きる糧としての書物との出合い
著者は10年に定年退社するまで朝日新聞の記者だった。社会部出身で論説委員などを歴任。同社書評委員も長く務めたから本に詳しいのは当然だが、20年以上も同じスタイルで連載を続けるのはただの物知りにはできない芸当だ。
長寿連載となったのは、新聞記者ならではの世相への観察が読者に支持されてきたからだろう。朝日在職中から、寸鉄人を刺す趣のコラムには定評があった。ときに古典を引用し、あるいは自ら編み出した表現で権力の横暴や世の偽善を突く。それでいて偉そうにならないのは、衒学(げんがく)趣味と無縁だからだと思われる。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け