トランプの登場で蓋が開いてしまった「パンドラの匣」 果たして最後に"希望"は残っているのか

私たちの未来はどこへ向かうのか
増田ユリヤ(以下、増田) アメリカにおける「トランプ現象」に呼応するかのように、世界は今、「自国第一主義」の波に覆われつつあります。ドイツ、フランス、イタリア、ハンガリーといったヨーロッパ諸国、さらにはラテンアメリカ諸国でも、いわゆる「極右」と呼ばれる政党が台頭してきています。
背景には大衆が支えるポピュリズムがあるといわれます。これからの世界、そして私たちの未来は、どのような方向へ進んでいくのか考えましょう。
池上彰(以下、池上) トランプが初めて当選した2016年ごろから、「ポピュリズム」「リバタリアン(自由至上主義)」といった言葉がメディアで頻繁に取り上げられるようになりました。あれから10年近く経った今も、それらの影響力は衰えるどころか、むしろ世界の潮流の1つとして根付いてきているように思います。
増田 こうした概念は、トランプ現象とどのように結びついているのか、ですが。
池上 ポピュリズムとは本来、「大衆の声を代弁する政治姿勢」を意味しますが、実際には「エリートや既得権層への反発」を前面に出し、「自分こそが国民の本音を代表する」と主張する政治手法として用いられています。トランプは、まさにその典型と言えます。
彼はワシントンの政治家や大企業、既存メディアを「腐敗したエリート」と断じ、「自分は普通のアメリカ人の味方だ」とアピールしました。こうしたシンプルで感情に訴えるメッセージが、多くの有権者に響いたのです。
増田 「リバタリアン」は、「政府の介入は最小限にすべき」「個人の自由を最大限に尊重すべき」とする思想を持つ人々ですよね。税金や規制を嫌い、「自分のことは自分で決めたい」という考え方が根底にあり、アメリカでは根強い支持を受けています。