五輪談合「電通主導」の検察主張に漂う無理やり感 弁護側は組織委員会による「官製談合」を示唆

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そもそも電通が組織委員会の運営に深く関わるようになった背景には、組織委員会の会長だった森喜朗・元首相の働きかけがあった。2017年3月のことだ。要請を受けた電通は同じ年の6月に対応策をとりまとめ、森喜朗氏に提案、採用された。

このとき電通がまとめた対応策の中に、競技団体との信頼関係がある民間業者の活用や業者選定を電通がサポートするという内容が含まれていた。

一連の対応策が後に「電通が入札談合を主導した」と指摘される原因になった。電通からの提案を受けて、組織委員会は2017年8月には吉村局長が「競技ごとに委託会社を決めるべき」と発言するなど随意契約を前提とした検討作業を進めていた。

だが、2018年1月に競争入札の実施が決まった。電通側は一般入札の実施が決まった後も、業者の選定に協力するよう求められたという。

組織委員会の組織としての責任は?

談合に深く関わっていた組織委員会の組織としての責任は追及されないのか。組織委員会には多くの公務員が出向していた。前述の吉村氏は都庁、中村CFOは財務省からの出向だった。公務員などが談合に関与した際に適用されるのがいわゆる官製談合防止法だ。

今回は官製談合防止法が適用されなかった。同法は、認定要件に「国又は地方公共団体が資本金の二分の一以上を出資している法人」などと定めている。

東京都は組織委員会の設立時から資金を「出えん」しているが、これは出資とは異なり寄付の性質が強いため、官製談合防止法が適用されなかったとみられている。

事件を所管している東京地方検察庁の次席検事は、組織委員会が起訴されなかったことについて、「法と証拠にかかわることだが、(元次長)個人のみ起訴ということは(組織委員会ではなく元次長のみの)個人の犯罪であると判断したということ」と、11月の定例会見で回答した。

独占禁止法に詳しい川合弘造弁護士は、「談合事件では事業者ではない発注者側の個人が共犯関係を認められて罰せられる場合がある。実際、過去に談合に関与した日本道路公団の元理事が共同正犯として有罪となっている」と指摘する。

ただ「独占禁止法の両罰規定は、当該個人が所属する発注者である法人には及ばない。いわゆる官製談合防止法にも両罰規定がなく、仮に適用されたとしても、(発注者の)法人が処罰されることはない」と話した。

弁護側によれば、公取・特捜部の強引な見立ては談合の規模を示す受注実績額にも現れているという。

下の表は談合に関与したとされる各社の受注実績額をまとめたものだ。最も多いセレスポで約120億円、電通で74億円などとなっている。総額で400億円を超える巨額の談合事件として、メディアでも盛んに取り上げられた。

東京五輪談合事件での受注額実績リスト
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