五輪談合「電通主導」の検察主張に漂う無理やり感 弁護側は組織委員会による「官製談合」を示唆
そして、テスト大会の”実施”と本大会の計画・実施をどの業者が担当するかは入札を行わない随意契約で決めた。これが第2段階。テスト大会の計画立案を受注した業者と、テスト大会の実施から本大会の計画・実施まで受注した業者はほぼ一致していた。
公取や特捜部はテスト大会の計画立案から実施、本大会の計画・実施までの2段階を一体とみて、業者同士が合意して行った入札談合の存在を主張している。
一連の事件で起訴されたのは、組織委員会の森泰夫・元次長、電通の逸見晃治・スポーツ局長補(当時)など各社幹部の6人、電通や博報堂など大手広告代理店6社だ。
組織委員会と電通や各社の間で応札についてのやりとりがあったという事実については弁護側もおおむね認めており、この部分には争いがない。問題は談合の構図や範囲だ。
一般的に入札談合と言われる行為には2つの類型がある。1つは民間企業など受注を目指す事業者同士が互いに応札価格や数量などを調整するヨコの談合。もう1つは官製談合と呼ばれるもので、発注側の行政担当者が深く関与するタテの談合だ。
検察が描いているのはヨコの談合の図式だ。冒頭陳述などによると、2017年12月ごろから組織委員会の森次長と電通の逸見氏が事件に関係した各社担当者との面談をスタートし、2018年2月から4月までの間にどの競技・会場にどの会社が応札するかという割り振りが完成したという。
談合の主役は電通か、組織委員会か
例えば、森・元次長は2018年3月にバスケットボール会場の受注希望を伝えたフジクリエイティブコーポレーションに対して「バスケは電通でしょう」などと告げ、入札への参加を断念するよう促したとされている。
また、電通は6社の中でも中心的な役割を担っており、オリ・パラでの利益確保と大会後のスポーツビジネス拡大を目指す利益目的が背景にあった、と検察は主張している。
一方の弁護側はこうした検察側の見立てに真っ向から対立する見解を示した。
電通はオリンピック関連業務全体で約467億円の赤字だったと説明。実態としては官製談合の構図だったのに、公取や特捜部が電通主導の談合に無理矢理仕立て上げたと主張したのだ。
例えば、組織委員会の幹部、吉村憲彦・大会準備運営第二局長(当時)が「バランスが大切」「電通がたくさんに見えないほうがいい」といった内容の指示を森・元次長に対して行っていたことが明らかになった。
電通側の弁護人は、「仮に本件が談合に当たるなら、吉村局長の指示がまさに談合の徹底指示だ」と糾弾する。
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