自身が目指したスタバの方向性とは異なる商品を売り出すことについて、シュルツはどのように捉えていたのだろうか。シュルツはこのように語っている。
シュルツはフラペチーノの導入に強く反対した。これは、自然なことだろう。コーヒーがアイデンティティの会社が砂糖とミルクから成るドリンクを売ろうとしているのだから、「それ、うちの会社がやるべきことなの?」と反発するのも無理ないことだ。
私たちが働くなかでも、このようなことは多くある。「弊社らしさを大切にする人々」と、「弊社らしさの枠を乗り越えようとする人々」の対立……とでも言えば、わかりやすいだろうか。前者から見れば後者は、横暴かつ、これまでの自社(弊社)の歴史に敬意を払っていないように見えるし、後者から見れば前者は、時代に合わせた変化を拒んでいるように見える。
しかし、結論から言えばシュルツは“賢明”だった。その後、実際にフラペチーノをテスト販売してから、次のように考えを変えたのだ。
フラペチーノが多くの熱烈なファンに迎え入れられたことを受けての発言である。
「顧客は常に正しい」。シュルツが述べるこの認識は非常に重要だ。なぜなら、この簡単な一文にこそ、スタバの「矛盾」をひもとく大きなヒントが隠れているからだ。
つまり、「店側が何を望んでいるのか」ということ以上に「顧客は何を望んでいるのか」ということを考え、顧客の要望に合わせるように店を作ると、そこには必然的に「矛盾」が生じる、ということだ。
スタバに「矛盾」が生じているのは、スタバが常に顧客の声に耳を傾けてきたからなのではないか。
実は「イル・ジョルナーレ」で軽く失敗していた
ビジネスにおいて「顧客が何を望んでいるのか」を考えることは、ビジネス本でも力説されている。このような考え方を、シュルツはどこで体得したのか。それは先ほども少し触れた「イル・ジョルナーレ」、彼がスタバを一度退社して立ち上げたカフェバーでの経験にある。シュルツはこの店の経営について、自著で次のように語っている。
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