スタバの「フラペチーノ」に潜んでいる驚きの真実 「うちはコーヒーの会社」育ての親も反対だった

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シュルツにとってスタバでの日々は刺激に満ちたものだったという。その勤務の中で彼はイタリアへ出張することになる。イタリアといえばコーヒー文化の中心地といってもよい。街中にカフェがひしめき、エスプレッソを中心とする豊潤なコーヒー文化が根付いていた。

シュルツもご多分に漏れず、そのコーヒー文化に感銘を受ける。シュルツはイタリアで現地のコーヒー文化に触れ、実際にそこで「カフェバー」文化が人々に根付いていることに衝撃を受ける。

シュルツが何より感動したのは、それがただ「コーヒー」という商品を売っているだけではなく、そこを中心として人々が交流し、コミュニティーが生まれているということだった。アメリカにもこのようなコミュニティーのハブになるような店ができないものかーー。こう、シュルツは強く考えるようになった。

新生「スタバ」の誕生から「イル・ジョルナーレ」へ

しかし、前回も書いた通り、スタバはこの時点ではあくまでもコーヒー焙煎店であった。シュルツがこのアイデアを提案したとき、創業者のジェリーらは断固としてその案を認めなかった。

しかし、シュルツの熱意は尋常ではなかった。何度もカフェバースタイルでの業態展開を訴えたところ、新規店舗の一部を間借りする形でコーヒースタンドのオープンが認められることになった。

これが、現在、われわれがよく見知っている「スタバ」の原型の誕生だ。この実験店舗はシュルツの思惑通り、大きな話題を博すことになる。それにもかかわらず、ジェリーたちは、スタバを本格的なカフェスタンドの業態へシフトすることを承知しなかった。

しかし、シュルツはカフェスタイルでの業態展開に大きな期待を抱いていた。そこで彼は思い切った行動に出る。スタバを退社したのだ。そして、自身が思い描くカフェ業態を展開するため、「イル・ジョルナーレ」という、イタリアのカフェスタンドをモチーフにしたカフェを立ち上げる。

その「イル・ジョルナーレ」が軌道に乗ったとき、シュルツの耳にある話が入ってくる。スタバの経営権が売りに出されているという。ジェリーら、スタバの創業者たちはそれぞれがそれぞれスタバとは異なる道を歩もうとしていた。その際に、スタバの経営を任せることのできる人物を探していたのだ。

ほかにもスタバの買収に名乗りを挙げた人物は多くいた。それも、シュルツより資金力がある人物ばかり。シュルツはなんとか資金をかき集め、苦心の末、その経営権を取得することに成功。そして、新生「スターバックス」が誕生するのである。

スタバ
その後、日本を含む世界じゅうにスタバは拡大していった(筆者撮影)
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