スタバの「フラペチーノ」に潜んでいる驚きの真実 「うちはコーヒーの会社」育ての親も反対だった

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さて、シュルツ体制になって、スタバは当初持っていたローカル店からグローバル店へと大きく変化を遂げていくことになる。そして、その途上でさまざまな矛盾をはらんでいくことになる。

シュルツ体制が成し遂げ、スタバの発展に大きく貢献したのが、「フラペチーノ」だ。「フラペチーノ」はスタバが買収を通じて手に入れ、世の中に広めた新しい商品であり、氷菓子を意味する「フラッペ」と「カプチーノ」を合わせた造語である。

スタバで頼むのはフラペチーノだ、という人も多いかもしれない。実際、現在スタバでは年中頼むことができる通常メニューのフラペチーノに加えて、季節限定フレーバーのフラペチーノが販売されていて、それらのフレーバーがSNS上で大きな話題になることも多い。フラペチーノが現在のスタバにおいて主力商品の一つであることは疑いようのない事実であろう。

実際に、フラペチーノは同社の国際的な躍進を助けた存在でもある。スタバがヨーロッパに進出する際、大きな障壁となったのは、ヨーロッパにある既存のカフェとの差別化をどのように作り出していくのか、ということであった。先にも見た通り、スタバはイタリアのカフェ文化をもとに作られているから、そもそもその「元ネタ」が豊富にあるヨーロッパではスタバは展開しにくいという問題をはらんでいた。

ここで役に立ったのが、他でもないフラペチーノである。フラペチーノは、本場のカフェ文化にはないメニューである。逆にそれが、ヨーロッパにおけるスタバの存在意義、他のカフェとの差異化に役立ったのである。ヨーロッパにスタバが伝播する過程にはフラペチーノが必要不可欠だった。

フラペチーノという「矛盾」

ただし、ここに大きな矛盾がある。そもそもシュルツが惚れ込んだイタリアのカフェバーにはフラペチーノなんていうメニューはない。カフェインも入っていなければ、砂糖がたっぷりというのがこのフラペチーノだ。この点を捉えた批判もある。

「フラペチーノはもっと大きなマイナスをスターバックスにもたらしていた。[…]ストローで飲む、透明なプラスチックカップに入ったクレヨン色のそうした飲み物は、真正なコーヒーではない。そうしたドリンクは、本物のコーヒーを標榜する店には泡だらけで甘すぎ、あまりにも冷たくフェイクすぎて場違いなのだ。[…]オートマチックの機械に依存し、利益追求に打ち込むスターバックスは、砂糖とミルクたっぷりのドリンクを目玉とするフラペチーノ・カンパニーになってしまった」(ブライアン・サイモン『お望みなのは、コーヒーですか?』p.55-56)
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