「子どもに苦手を克服させる親」がこうも危うい訳 むしろ子どもはとことん「いびつ」でいい

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勉強が得意で、スポーツ万能。実技科目もそつなくこなし、何でもできる優等生。もしもわが子がこうならば、親としては安心ですが、そんな子はまれです。何でも一番になりたいタイプの子なら自らその努力ができるかもしれませんが、大多数の子どもは、自分の好きなことだけ頑張ろうとします。それなのに「何でもできること」を求めてしまうと、好きなことに向けられるはずだったエネルギーが分散してしまい、その子の強みが育たなくなります。

何でもまんべんなくほどほどにできる人よりも、不得意なことはからきしダメだけれど、得意なことはとことん得意という、いわば「いびつ」な人こそが、これからの社会で力を発揮しやすいのです。

有名進学校も「いびつ」を勧める

実際、有名進学校の校長先生の多くは、「いびつ」がいいという旨のメッセージを発信しています。

灘中学校の先生は、こんなことを言っていました。

「うちの子たちが素晴らしいのは、全員が『自分の世界』を持っていること。たとえば、電車のことだったらあいつに聞こう、数学はあいつだ、ゲームに関してはあいつに聞けば間違いないというように、それぞれが必ず『この分野は○○だ』という専売特許を持っている。それは社会の縮図のようなもので、彼らは大人になっても、『ITの分野ならばあいつとあいつに聞けば何とかなりそうだな』というネットワークを作っていく。自分の好きな世界をどんどん広げていけばいい」

これは灘中に限った話ではありません。開成中学校の先生も麻布中学校の先生も、進学校、名門校と呼ばれる学校の説明会では、みなさん同じことを言っています。

もちろん、「得意」を伸ばす子育てをしたところで、子どもがその道で一流になるという保証はありません。ならば、「みんなができていることはひと通りできる大人にさせたい」と親御さんが願うのも、もっともです。

ただ、一度立ち止まって考えてみてください。果たしてそれは、本当に子どものためになっているでしょうか。突き詰めていくと実は、「苦手なことがあったら、後々子どもが困るのではないか」という自分の不安を払拭しようとしているだけではないでしょうか。

世の中の価値観は、「苦手なものがある」ことがよくないというものから、「飛び抜けて得意なことがない」ことがよくない、という方向に徐々に転換しつつあります。

ならば子どもを信じ、得意を伸ばす子育てにシフトするのが、本当に子どもの将来を考えた行動だと言えるのです。

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