「子どもに苦手を克服させる親」がこうも危うい訳 むしろ子どもはとことん「いびつ」でいい

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このようなご家庭の親御さんに「いびつ」の話をすると、「とはいえ先生、それではテストで点が取れないんですよ。下のクラスに落ちてしまいます。それでは困るんです」とおっしゃる方もいます。

そんなとき、私は次のような提案をします。

「本当にこの子を伸ばしたいのであれば、ひとつ、覚悟をしましょう。これから2カ月間は、割り切って、テスト対策の勉強を捨ててください。そして、本人が好きな科目を、好きなように勉強させてみてください」

結論を言ってしまえば、この方法を実行したところで、テストの点数が大きく下がることはありません。今までは4教科すべてをまんべんなく勉強しようとしていて、結局どれも身についていなかったわけですから、テスト対策を捨ててしまっても結果はあまり変わらないのです。

このようなお子さんには、まず本人が興味を持てる科目、つまり点数を取れる見込みのある科目に時間を割かせます。残りの科目は本人がわかる部分を中心に「これだけはやっておこう」という部分を大人が選んであげます。

すると「時間を割いた算数だけは点が伸びた」というように、「いびつな成績」を取るわけです。ほかの科目は勉強していない分、点数が下がる場合もありますが、意外と変わらないことも少なくありません。

「とにかくひと通りこなす」という方向を見直す

どういうことかというと、とりあえず見込みのある科目だけを勉強させ、ほかの科目は「残り時間が限られているから、できることだけしておこうね」と負担を減らすことで、子どもは「たったこれだけで本当にいいの? じゃあ、やる!」と頑張りやすくなるのです。

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そうすると、「ほとんどすべての解答欄を埋めているけれど、×だらけ」という答案から、「解答欄は空白だらけだけれど、解いた問題には○がつく」という答案へと変わっていきます。すると結果的に、全体が底上げされるのです。

目先の2カ月を我慢するのは勇気がいりますが、我慢できれば、子どもの強みが育ちます。確かに私は中学受験指導のプロですから、ある程度うまくいく確証を持ったうえでサポートしています。しかし、プロによるサポートがなくても、取り組むことは同じです。子ども本人が「できると思うこと」を一緒に選んで、力を注がせてあげるのです。やがては子ども自らが「何に注力するか」を選び取れるようになっていきます。

「とにかくひと通りこなす」という方向から、「子ども自身が得意分野を選んで取り組む」方向に発想を転換すると、勉強に限らずあらゆる場面で、子どもが自ら主体的に取り組めるように育っていきます。

小川 大介 中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員

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おがわ だいすけ / Daisuke Ogawa

1973年生まれ。京都大学法学部卒業。学生時代から大学受験予備校、大手進学塾で看板講師として活躍後、1999年に中学受験専門のプロ個別指導教室SS-1を設立。同時期に「中学受験情報局『かしこい塾の使い方』」の創設にも参画し、情報発信を開始。受験学習はもとより、幼児低学年からの子どもの能力の伸ばし方や親子関係の築き方についての助言や提案に定評がある。『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』(すばる舎)など、著書多数。

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