「子どもに苦手を克服させる親」がこうも危うい訳 むしろ子どもはとことん「いびつ」でいい

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「いびつ」の話をすると、こんな相談を受けることがあります。

「『算数は得意だけど国語は苦手』というくらいならば、まだ見守ることができます。ただうちの子は、勉強も運動も嫌いで、ひたすらプラモデルを作ってばかりなんです。心配で仕方がありません」

確かに、勉強にも運動にも興味を示さず、親から見てそれほど価値を感じられない趣味にばかり打ち込む子どもを見ると、不安に思うのもわからなくはありません。その子の将来が「勉強を頑張っていい大学に入学し、いい会社に入る」という、わかりやすい「理想」に当てはめづらいゆえに、不安に感じるのでしょう。

20年もたてば社会は大きく変わる

ここで気をつけていただきたいのは、私たち親が知っている社会は「今現在の社会」であるということです。子どもたちが世に出る「2030年代、2040年代の社会」ではないのです。

私が学生のころ、銀行員がどんどんリストラされる時代がくるとは誰も思っていませんでした。私の通っていた大学でも、複数の業界を吟味したうえで、銀行に就職していった同級生が多数いました。
しかし今や銀行員は、「AIに置き換えられる仕事」の一番手と言われるまでになりました。20年やそこらで、社会はこんなにも変わるのです。

20年後の未来なんて、誰にも読めません。それなのに、子どもが好きで熱中していることに対し「それは将来に結びつかないからやめなさい」「こっちなら将来につながりそうだからやっていいよ」と口を出すのは、親のエゴでしかありません。何度も言いますが、未来なんて誰にもわからないのですから。

過去を振り返ればわかります。20年前、「ユーチューバー」という職業が生まれることを誰が予測していたでしょうか。

今の正解が、子どもたちが社会に出るころにはまったく通用しないかもしれないということを、私たち親は常に心に留めておく必要があります。

実際に中学受験の現場でも、成績上位で楽しくやれている生徒の親御さんほど、子どもの「好き」を伸ばしています。本人の好きなこと・得意なことを伸ばしながら「苦手なことも、できる範囲で頑張ってみよう」という方向に持っていくことで、子どもが力を発揮しやすくなるのです。

逆に、あれもこれもと全部頑張らせようと親御さんのあせりが目立つご家庭は、子どもの成績が伸び悩みがちです。このような子は、自分の「得意ゾーン」を持てていないからです。

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