EU、アメリカ、その他の国々の議員や規制当局は、AIを規制する戦いに敗れつつある。この強力なテクノロジーが仕事を自動化して人々から雇用を奪い、偽情報の拡散を加速させ、最終的には独自の知性のようなものを発展させるのではないかという懸念が高まるなか、各地の規制当局は大急ぎで後れを取り戻そうとしている。
各国はAIの潜在的な危険性に対処するべく迅速に動いてきたが、ヨーロッパ当局はテクノロジーの進化に不意を突かれることとなった。アメリカの議員たちは、AIの仕組みをほとんど理解していないことを大っぴらに認めている。
各国の対応はバラバラなものとなっている
その結果がまとまりのない対応だ。ジョー・バイデン大統領は10月、AIが国家安全保障にもたらす影響に関する大統領令を発出、議員たちは対策があるとすれば、どのような法案を成立させるべきか議論している。
日本はAIについて法的拘束力のないガイドラインを策定中だが、中国は特定のAIに制限を課した。イギリスは、既存の法律で十分にこのテクノロジーを規制できるというスタンス。サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)は、AI研究に国費を注ぎ込んでいる。
このように各国の対応がバラバラなものとなっているのは、当局と技術の間に根本的な差があるためだ。AIシステムがあまりに急速かつ予測不能に進歩しているため、議員や規制当局がそのペースに追いつけていないのである。
両者のギャップは、AIに関する政府の知識不足、複雑に入り組んだ官僚制度、さらに規制が多くなりすぎるとAIがもたらすメリットを不用意に制限することになりかねないという懸念によって、一段と深刻化している。
テクノロジー規制におそらく世界で最も積極的なヨーロッパでさえ、AIは政策担当者たちを混乱させている。