2021年4月、人工知能(AI)を規制するために作成された125ページに及ぶ法律案を提出したヨーロッパ連合(EU)の首脳たちは、それがAI規制の世界的モデルになると自賛した。
ヨーロッパ議会の議員たちは、他国ではAIが議題にすら上らなかった頃から、3年にわたって何千人という専門家の見解を聴取。その結果、「将来も時代遅れになることのない」「画期的な」政策が生まれたと、27カ国から成るEUでデジタル政策を統括するマルグレーテ・ベステアー氏は断言した。
その後、ChatGPTが登場した。
ChatGPTに出し抜かれた規制案
プロンプトに対して独自の回答を生成することで昨年話題をさらった、この不気味なほど人間的なチャットボットは、EUの政策立案者たちに不意打ちを食らわせた。
EUの法案ではChatGPTを動作させている種類のAIに対する言及がなく、政策議論の主要な焦点とはなっていなかった。議員やその補佐官たちは、このギャップに対処するため盛んに電話やメールで連絡を取り合った。その一方で、テック企業の幹部たちは、過度に厳しい規制はヨーロッパを経済的に不利な立場に追いやる可能性があると警告した。
EUの議員たちは今なお、何をすべきかをめぐって議論を続けており、AI規制法案は危機に瀕している。「私たちはこれからも、つねにテクノロジーのスピードに後れをとり続けるだろう」と、AI法案の作成に携わったヨーロッパ議会のスヴェーニャ・ハーン議員は言う。