EUがどんなに張り切ってもAI規制の「無理筋」 AI規制はテクノロジーの進化に追いつけない

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AIスタートアップ企業アンソロピックの創業者ジャック・クラークは、何年も前からワシントンを訪れ、議員たちにAIに関するレクチャーを行ってきたが、ほとんどの場合、姿を見せるのは数人の議会補佐官だけだった。

ところが、ChatGPTが話題になると、レクチャーは議員や補佐官でいっぱいになり、誰もがクラークのAI短期集中講座に参加し、ルール作りに関する意見を聞こうと大騒ぎになった。

技術的な専門知識に欠ける議員たちは、AIの仕組みに関する説明を受け、ルール作りを助けてもらうため、アンソロピックやマイクロソフト、オープンAI、グーグルといったAI開発企業にますます頼るようになっている。

AI規制を封じたアルトマンの「世界ツアー」

テック企業は、有利な立場をがっちりとつかみ取った。ロビー活動に関する開示情報によると、今年上半期には、マイクロソフトとグーグルに所属する合計169人のロビイストの多くが、議員や政府関係者と面会してAI立法に関する議論を行った。オープンAIは同社初のロビイストを3人登録。ある技術系ロビー活動団体は今年、AIの恩恵を宣伝する2500万ドル規模のキャンペーン計画を発表した。

それと同時期にオープンAIのサム・アルトマンCEOは、前下院議長のケビン・マッカーシー氏(共和党・カリフォルニア州選出)や与党・民主党上院トップのチャック・シューマー氏(ニューヨーク州選出)を含む100人以上の議員と面会。5月に議会で証言した後、アルトマンは世界17都市を巡るツアーに乗り出し、各国の首脳たちと会談した。

ワシントンでは、AIをめぐって慌ただしい活動が繰り広げられてきたが、その成果を示す法律はまだ1つもできていない。

マイクロソフトのブラッド・スミス社長によると、5月にホワイトハウスでAIに関する会議が行われた後、マイクロソフト、オープンAI、グーグル、アンソロピックの首脳たちに対し、それぞれのシステムをより安全にする自主規制を策定するようにという要請が出された。

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