郵便番号はあるのに実体がない「幻の地名」の正体 廃れて消えた町もかつて誰かの故郷だった

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夕張市の夕張シューパロダム。現在は無人の地域となっている(写真:Graphs/PIXTA)
郵便番号はあるのにそれを用いる住人がいない、現在の地図上に存在しない「幻の地名」。かつては人が住んでいたその地が幻の地名となるまでに、どのような歴史があったのか。地図研究家の今尾恵介氏が解説します。
※本稿は今尾氏の新著『地名散歩 地図に隠された歴史をたどる』から一部抜粋・再構成したものです。

おそらく書く人がいない郵便番号「454-0944」

名古屋に「大蟷螂町(だいとうろうちょう)」という町がある。市域の西側に位置する中川区で、庄内川に面した所だ。江戸時代から大蟷螂村と称する歴史的地名だが、蟷螂はカマキリのことだから、思えば珍しい地名である。

『角川日本地名大辞典』によれば「(地名は)大棟梁により、往古(おうこ)熱田神宮の宮大工が住んでいたことにちなむという」とあって、なるほど転訛したのかと納得しそうになるが、偉大なる大工の棟梁が「大カマキリ」に転じた経緯はよくわからない。あるいはカマキリ顔をしていたからか。

郵便番号は454-0944であるが、この番号を書く人はおそらくいない。全域が河川敷だからだ。

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