国公立大0→20人合格「生徒が半年で激変する訳」 小論文指導で飛躍する「福岡女子商」の舞台裏

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小論文の指導において、柴山さんなりのアプローチ法がある。それは、問いかけることとプラスすること。

「小論文は結論ではなくプロセスが大事な科目で、例えばAIについて問われたとき、賛成か反対かはどちらでもよくて、賛成する根拠をエビデンスとともに示すことが大事なんです。

僕の授業は、すごく問いかけるから疲れると言われます。問題の解説をするとき、『日高さんはどう思う?』『石崎さんは?』とどんどん当てると、最初はみんなわからないから嫌そうで。でも、半年でみるみる知識を増やし、知識をつなげて考えられるようになる。

誰かが意見を出してくれたら、『こういうこともあって、そんな意見になっているかもしれないね、なるほど。次は』とプラスしていくのが僕のスタイル。だから、みんな発言するのが楽しくなり、最後のほうはもっと当てて、となっていく……。たった半年で目覚ましい成長を見せてくれるんです」

生徒がつらそうなときは考え方を変える

半年とはいえ、慣れない小論文を書き続けてつらくなる時期もあるだろう。実際に2人は柴山先生に相談して、スッキリした経験があると話していた。

「生徒がつらそうなときは、考え方や捉え方を変えるようにします。なぜつらいのかを聞いて、もし他の生徒と比べてできないことがつらいなら、人と比べていたら疲れるから、以前の自分と比べてみようと。数カ月前に彼女が書いた小論文を出してくると『前のは恥ずかしい……』と言うから、『それだけ成長したんだよ』と伝えます」

女子商に来て、柴山さんは改めて気付いた。「すべての子どもには限りない可能性とチャンスがあるのに、つかめていない」のだと。

「暗記のペーパーテストで測る従来の学校教育では、才能があっても見過ごされてしまうことが多い。自分はできないと思い込んだら、一歩踏み出す勇気がなくなってしまうんです。だから、女子商では『勝手に、諦めるな。』『挑戦せよ、その熱に僕らは動く。』と掲げています。これからも生徒たちがのびのびと自分の将来を描き、挑戦スイッチが入るきっかけを作るために、僕ら教職員もどんどん挑戦していきます」

「女子商の生徒たちはすごくピュアで、火が付くと本気で頑張ってくれる」。前回の取材で、柴山さんのこの言葉が印象に残っていた。卒業生2人の話を聞き、まさにその通りだと実感した。

「いい大学に行って、いい会社に入る」という進学校にありがちな価値観にまったくとらわれず、自分の心に素直に生きる彼女たちのような若者こそ、これからの日本に優しい希望の光を灯してくれるのかもしれない。

佐々木 恵美 フリーライター・エディター

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ささき えみ / Emi Sasaki

福岡市出身。九州大学教育学部を卒業後、ロンドン・東京・福岡にて、女性誌や新聞、Web、国連や行政機関の報告書などの制作に携わる。特にインタビューが好きで、著名人や経営者をはじめ、様々な人たちを取材。

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