不動産屋さんが語るマレーシア教育の魅力 「学校視察ツアー」を通じてわかったこと

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しかし一方で、中野さんは受験勉強のような基礎学力の強化を求める人にも、マレーシアは勧めないという。

「こちらには偏差値はありません。受験勉強のように基礎学力を鍛えたいなら、日本の学校のほうが良いでしょう。日本で日本語で日本人相手にずっと仕事をするつもりなら、日本で勉強したほうがいい」という。

では、受験型教育をくぐり抜けるメリットを知る中野さんが、あえてなぜマレーシアでの教育に魅力を感じるのか。

日本の受験型教育にはない、マレーシアの魅力とは

「こちらの教育を長く受けて育った日本人をみると、実に視野と許容範囲の大きい、枠にとらわれない人がいることに気がつきました。受験勉強型教育をずっと受けていたら、とてもああはならない。日本式教育を受けた私は、見てきたものや、経験したものが違うと痛感します。受験勉強がない分、自由な時間がある。さらに私が回っている学校の中には、先生から教えられる詰め込み型教育というより、自分で何かリサーチする材料を見つけ、それをグループみんなで研究する、そんな学校があります。ある種、日本の教育が例外なんだと思います」

今、子供に戻れるならそんな学校に行ってみたかった、と言う中野さんは、マレーシアの学校の中でも、IB教育に特に魅力を感じている。ITに小さい頃から触れさせるのも大きいという。中野さんも「自分自身も、小学校の頃からパソコンに触れる機会があれば」と悔しがる。

IGBインターナショナルスクールでの小学校1年の授業内容。ARと呼ばれる仮想拡張現実を見るための技術を取り入れ、小さな子どももITになじむ訓練をする

たとえば、IGBインターナショナルという学校ではGoogle Docsを使って小学校低学年からプレゼンテーションをさせるのだという。

「家の電力の消費量をグラフにして分析させている授業を見ました。自分でリサーチして自分で考える訓練を小さい頃からさせる。パソコンを使ったプレゼンテーションを、英語環境で、多国籍の中で学べるというのは大きいですよ」

ただ、日本の常識などを捨ててしまうのか、日本的感覚を残しつつ、マレーシアも取り入れるバランス型で行くのか、ここは各家庭が考えるべきだという中野さん。

「いろいろな人種の中で、さまざまな考えを学ぶことに大きな価値がある。常識というのが当てはまらない人たちがぐいぐいと自分の意見を言ってくる。この中で、自分を出す。これを若いうちに経験しておくことは重要だと思います」と結んでくれた。

野本 響子 ジャーナリスト

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のもと きょうこ / Kyoko Nomoto

東京都立青山高校、早稲田大学法学部卒業。安田火災海上保険(現損保ジャパン)を経てアスキー入社。『MAC POWER』(アスキー)、『ASAHIパソコン』『アサヒカメラ』(朝日新聞出版)の編集者を経て現在フリー。『僕がアップルで学んだこと』『企業が『帝国化』する』(ともに松井博著/アスキー新書)編集。著書に『いいね!フェイスブック』(朝日新聞出版)、『マレーシアの学校の○と× アジア子連れ教育移住の第一歩』(Kindle)ほか。1990年代半ば、仲良くなったマレーシア人家族との出会いをきっかけに、マレーシアの子育てに興味を持ち、現在クアラルンプール郊外に長期滞在中。趣味はオーケストラでの楽器演奏。

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