「TV放送を食うサブスク」の頭打ちが続く納得事情 約220万台の視聴ログでわかった視聴者ニーズ

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そしてこの分析結果は、動画配信がテレビのバラエティやニュースと同じ視聴者ニーズを満たすための方法は、テレビ放送と同じ(FASTのような)フォーマットを採用することだけではないことも示している。

YouTubeはテレビ放送とは異なるオンデマンド配信であり、番組表は採用していない。また視聴できるコンテンツもテレビ放送とは異なり、短尺中心のユーザー投稿動画だ。

それでも、YouTubeはテレビ放送でバラエティやニュースを見る視聴者のニーズをうまくつかみ、そこからの乗り換えを発生させることができているのだ。動画配信サービスがどのような視聴者ニーズを満たすかは、フォーマットやコンテンツといった外形的な要素だけで決まるわけではなく、それらを統合した視聴体験全体によって決定されることがわかる結果だ。

テレビ視聴体験のイノベーション

視聴者はなぜテレビを見るのだろうか。テレビに何を期待しているのだろうか。そしてインターネットにつながったテレビは、その期待にどのように応えられるだろうか。レコメンド、オンデマンド配信、双方向配信など、テレビで実現できることがインターネットによって飛躍的に拡大した今こそ、視聴者がテレビに期待することの本質を捉えることが必要だ。

本稿で見てきた視聴データ分析の結果は、テレビに対する視聴者の期待に、動画配信がまだ十分応えられていない領域が残されていることを示している。朝のテレビ視聴に、またニュースやワイドショーの視聴に、インターネットはどのようなイノベーションを起こせるだろうか。視聴者の期待を捉えた新しい視聴体験を自由に構想できれば、テレビの可能性はまだまだ高まるはずだ。

山津 貴之 インテージ メディアアナリスト

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やまつ たかゆき / Takayuki Yamatsu

2014年に大学卒業後、インテージへ入社。2017年からスマートテレビ視聴ログを用いた商品である「Media Gauge」の新規事業開発を担当。データベースや調査設計等の基盤構築から、視聴データ分析による広告主や放送局等での活用支援まで幅広い領域に携わる。2021年からインテージグループR&Dセンターおよび在学中の筑波大学大学院ビジネス科学研究群で、スマートテレビでの放送とアプリの視聴実態について研究を開始。研究成果は学術雑誌”Journal of Broadcasting & Electronic Media”に掲載。

 

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