「TV放送を食うサブスク」の頭打ちが続く納得事情 約220万台の視聴ログでわかった視聴者ニーズ
しかし、従来のテレビ放送と同様のフォーマットに回帰することだけが、動画配信がテレビ画面で視聴者ニーズを満たすための変化だろうか。オンデマンド視聴でありながらもテレビ画面での視聴が拡大し続けているYouTubeのデータを分析すると、変化の方向はもっと多様で、自由であり得ることが見えてくる。
次の図表に、各動画配信サービスの視聴がテレビ放送の視聴に与える影響を回帰分析と呼ばれる統計的な手法で分析した結果を示した。図の値が大きいほど、その動画配信の視聴によってテレビ放送の視聴が減少していること、すなわち視聴者の乗り換えが起こっていることを意味している。
さらに言えば、視聴者の乗り換えは乗り換え元と乗り換え先が共通する視聴者ニーズを満たしていることも意味している。どんなに面白いドラマがあったとしても、ニュースを見たいという視聴者ニーズを満たせなければ、ニュースからドラマへの乗り換えは起こりづらいというようなことだ(詳細な分析手法はYamatsu & Lee (2023)を参照されたい)。
なぜYouTubeの成長は止まらないのか
まず有料動画配信の分析結果に着目すると、チャートが左に偏っていることがわかる。ドラマと映画といったジャンルからの乗り換えが中心で、ニュースやワイドショーといった情報系のコンテンツからの乗り換えは少ないことを示す結果だ。
次にABEMAに目を移すと、バラエティやワイドショーに対するニーズも一定カバーしていることがわかる。扱っているジャンルの幅が広く、かつ番組表に基づいた配信も採用していることの結果だろう。ただし、それでもドラマからの乗り換えが最も大きいのは有料動画配信と共通した結果だ。
対してYouTubeの分析結果が示すのは、対応する視聴者ニーズの広さだ。ドラマではABEMAより低い値だが、バラエティやワイドショーも含めてまんべんなく広いジャンルから視聴者を集めている。テレビ放送の視聴時間の74%がバラエティ、ニュース、ワイドショーであることはすでに見た。
YouTubeは対応する視聴者ニーズが広く、受動的な情報や気軽なエンタメといったテレビに対する大きいニーズも満たせている。有料動画配信が頭打ちしてきた現在でもYouTubeの視聴量が伸び続けている理由はここにあるだろう。
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