「TV放送を食うサブスク」の頭打ちが続く納得事情 約220万台の視聴ログでわかった視聴者ニーズ

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テレビ視聴ニーズの大部分はニュースやワイドショー

なぜ有料動画配信は伸び悩み、朝の配信視聴は普及しないのだろうか。番組ジャンルの観点からこの問いにアプローチすると、現在の動画配信サービスが満たすことができる視聴者ニーズの狭さが課題として浮かび上がってくる。

次の図表に、テレビ放送の番組ジャンル別の視聴時間構成比を示した。視聴時間の実に74%がバラエティ、ニュース、ワイドショーだ。ドラマ、アニメ、映画といった番組ジャンルは合計しても10%に過ぎない。

ドラマ等が見られやすいタイムシフト視聴を集計に含められていない点に注意が必要だが、タイムシフト視聴は冒頭の図表の「その他」にゲーム機の利用やDVDの視聴とともに含まれており、放送のリアルタイム視聴と比べれば時間が短い。この点を考慮すれば、本稿の論旨への影響は小さいと考えられる。

番組ジャンル別の視聴時間から、視聴者がテレビ画面での視聴に対して持っているニーズを推測できる。ニーズの大部分は、ニュースやワイドショーのような受動的に摂取できる情報であり、バラエティ番組のような気楽に流し見できるエンタメだ。それらと比べて、ドラマや映画をじっくり楽しむのは視聴者ニーズのごく一部でしかない。

当然、番組ジャンル別の視聴時間は、そもそも放送局がどのようなジャンルの番組をどれだけの時間放送するかにも依存する指標だ。しかし、放送局が長い間、視聴率を通してニーズを把握しながら番組編成を行ってきたことを前提にすれば、番組ジャンル別の視聴時間はやはり視聴者のニーズを反映したものだと考えられる。

番組ジャンルの視点で考えれば、有料動画配信の停滞、朝の視聴が普及していない、といった動画配信の成長の壁も理解しやすい。有料動画配信の主力コンテンツであるドラマ、映画、アニメはテレビ視聴に対するニーズの10%でしかない。どこかで視聴量が伸びづらくなるのは当然だ。

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