発達障害を抱える母親は、「就労継続支援B型事業所」で働いていた。主な業務はパソコンを使った作業だったが、周りに比べてスピードが遅く、日に日に劣等感が増していったという。
「もともとパソコンはまったく使えなかったんですが、事業所で教えてもらううちに使えるようにはなりました。でも、私と比べるとほかの人たちは作業がすごく早くて、自分も必死にやったのですが」(母親、以下同)
本人の特性上、一度作業を始めると自分の世界に入ったまま周りが見えなくなってしまう。作業の遅さをほかの従業員たちに指摘されることが日常的にあった。そういった言葉が人一倍気になってしまい、受け流すことができなかった。家に帰ってからも、ずっとそのことを考えてしまう。夜中まで自室で考え込み、眠れないことも多々あった。
「一歩家を出ると周りに心配をかけたくないという気持ちから、元気な自分を演じてしまうんです。仕事が終わった後は子どものご飯を作るためにスーパーを回るんです。食材を見ながら何を作ろうか考えるんですが気付いたら1時間経っていて、次の日も朝が早いので結局買っていくのは弁当や総菜。それを子どもに渡して寝るだけという生活が続いていました」
この家には5年前から住んでいるというが、散らかり始めたのは3年前から。仕事上の悩みが増え始めたのも、やはり3年前だった。外に出ると気分が高揚するが、家に帰るとそのぶん一気に体も心も重くなった。
生活保護に頼らず、子どもを育てたい
母親はこれまで断続的に生活保護も受けていた。しかし、「このままではいけない」「自分で稼いだお金で子どもたちを育てたい」という気持ちが強いがあまり、心身ともにパンクしてしまい、結果として母親業がおろそかになってしまった。
「生活保護から脱却して自分で稼いだお金で子どもを育てたいという気持ちにしがみついていたんです。だからこそ、何のために仕事をしているんだろうという思いになりました。働いて子どもを育てることが夢だったのに、どんどん路線が変わっていく。家はどんどんぐちゃぐちゃなっていって、掃除はしたいけど、休みの日はもう家で死んでいるような状態。やらないといけないことも山積みになっていって、でも全然できなくて」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら