カルビー、ポテトチップス「食感だけで10種」の裏側 北海道で見た、独自開発品種「ぽろしり」も凄かった

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「『ぽろしり』は2度も商品化を断念されそうになった品種なのです。他に優れた候補があったためなのですが、ある天候不順の年に『ぽろしり』だけが品質低下を起こさないことがわかり、繰り上げで新品種になりました」(五十嵐さん)

どこまでも契約生産者と2人3脚で

基本的に農協は通さずに、契約生産者からジャガイモを購入するのは、カルビーポテト独自の取り組みだ。これもジャガイモの品質へのこだわりから始まった。

「契約生産者が安心して栽培できる新品種を開発することのほかに、弊社ではフィールドマンを約50名抱えて品質向上と収量増に取り組んでいます。フィールドマンは、生産者と2人3脚で進むアドバイザー的存在です。弊社では、過去のデータから直近のデータまでを一元管理していて、全員がどこからでもすぐに確認できますから、皆さん頼りにしてくださっています」(五十嵐さん)

ジャガイモの品種改良をしたかった五十嵐さんは、すぐにやりたい仕事に就けたわけではない。入社後2年間はフィールドマンだった。数多くの生産者、異なる環境の多くの畑で見てきた取り扱い品種が、時として契約生産者を苦しめる怖さを身に染みてわかっている。

契約生産者との2人3脚は、開発者を独りよがりにしない効果もありそうだ。

「私は『ぽろしり』の後にも新品種を出しているのですが、加工適性は抜群なものの、商品化後に栽培面での欠点が見つかってしまいまして。この時は自らお詫びと調査に回りました」(五十嵐さん)

パッケージの裏側にある「じゃがいも丸ごと!プロフィール」(画像提供:カルビー)

カルビーのポテトチップスは一部商品のパッケージの裏面に「じゃがいも丸ごと!プロフィール」という2次元コードが記載してある。ここを読み取ると、その商品に使われたジャガイモの産地、生産者、品種、製造工場について知ることができる。これがなかなか面白い。

同じ商品であっても、時期によってこの情報は変わる。消費者と生産者の距離を近づける新たな食文化として広まっていってほしいものだ。

最後に五十嵐さんに、いち推しのポテトチップスを聞いてみた。

「『ア・ラ・ポテト』ですね。私にはとれたてジャガイモのおいしさが一番しっかり感じられる商品ですので」

たくさんあるポテトチップスにはそれぞれ意味がある。おやつに、おつまみに、パッケージを眺めながら食べ比べてみれば、新しい楽しみ方が見つかりそうだ。

竹下 大学 品種ナビゲーター

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たけした だいがく / Daigaku Takeshita

1965年東京都生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、キリンビールに入社。新規事業としてゼロから花の育種プログラムを立ち上げ、プロジェクト中止の決定を乗り越えて同社アグリバイオ事業随一の高収益ビジネスモデルを確立。2004年には、All-America Selectionsが北米の園芸産業発展に貢献した育種家に贈る「ブリーダーズカップ」の初代受賞者に、ただひとり選ばれる。技術士(農業部門)。著書に『植物はヒトを操る』(毎日新聞社、いとうせいこう共著)、『東京ディズニーリゾート植物ガイド』(講談社、監修)、『日本の品種はすごい うまい植物をめぐる物語』(中央公論新社)、『野菜と果物 すごい品種図鑑』(エクスナレッジ)等。

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