カルビー、ポテトチップス「食感だけで10種」の裏側 北海道で見た、独自開発品種「ぽろしり」も凄かった
エチレンは植物自体が放出するガス状の植物ホルモンだ。老化ホルモンとも呼ばれ、緑色のバナナを黄色くさせる際に用いられている。当然、野菜や果物の鮮度を保ちたければ、エチレンは少なければ少ないほどよい。
ところがポテトチップス用のジャガイモでは、あえて貯蔵庫内にこのエチレンガスを行き渡らせていたのだ。
「収穫したジャガイモは一定期間を過ぎると芽が伸びてきます。したがって貯蔵期間が長くなったジャガイモは品質低下を起こしやすいのです。老化を進めてしまうエチレンガスをあえて使うのは、発芽を抑える効果のほうを期待してのことです」(五十嵐さん)
芽が伸びにくくなったとしても、逆に糖度の上昇が進んでしまいはしないのだろうか。
「エチレンガス濃度と温度と湿度のバランスで、糖度の上昇を抑えつつ、発芽も抑え、エネルギーコストも増やさない条件を発見できたのです。これによって周年高品質なジャガイモを供給できるようになりました」(五十嵐さん)
「ぽろしり」開発秘話
かつて日本の栽培環境に合うポテトチップス用の品種は存在しなかった。これは自社だけではなく、契約生産者にとっての経営リスクでもある。だったら自分たちで開発しよう。カルビーポテトが自ら品種育成に乗り出したのは自然な流れだった。
2003年に開発をスタートさせ、2013年に生まれたのが「ぽろしり」だ。
「『ぽろしり』はフライにしたときの色の美しさが特徴です。病虫害に対する抵抗性を持たせたうえに芋にキズがつきにくく改良したため、現在の主力品種よりも優れています」
と五十嵐さん。
「ただでさえ農家の数が減っていくなかで、北海道ではジャガイモから、より手間のかからない小麦や大豆に切り替える生産者が増えています。そのためにも儲かる新品種を早く提供しなければなりません」(五十嵐さん)
「ぽろしり」の道内での作付面積は、2018年と比較して2022年には約2倍に増えたそうだが、品種開発は決して順調に進んだわけではなかった。
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