疑問だらけ羽生結弦さんの離婚騒動に欠けた視点 有名人、メディア、人々に求められる「線の引き方」

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最後に、ファンと世間の人々の対応について。

ストーカー行為や誹謗中傷は言うまでもなく断罪されるべきものですが、困ってしまうのは、本人たちにその自覚がないこと。むしろ、行動がエスカレートするほど、「自分は応援しているだけ」「あの人のためにやっている」という自己正当化が進んでしまう危険性があります。

たとえば、アイドルのファンたちは“推し”の結婚に対して、「幸せを願って変わらずに推し続ける」という人や、「悲しさを振り切って別のアイドルに“推し変”する」という人ばかりではありません。「悔しさから何とかして相手を叩きたい」という人や、「『裏切られた』と逆上して“推し”を叩く」という人も一定数いて、自分がそうならないようにしたいところです。

長年エンタメ現場を取材していると、いつの時代もわきまえたアイドルのファンたちは、第1の“推し”だけでなく、第2や第3の“推し”、またはそれになりうる候補を見つけておくなどの心構えがありました。結婚しても「推し続けるか、推し変するか」の選択ができず、「推しや結婚相手を叩かない」という線を引けそうにない人は、自分のメンタルをある程度コントロールするための事前準備をしておいたほうがいいでしょう。

これは有名人に限らず、恋人や結婚相手などに関しても同様で、1人に執着しすぎるほど、思いどおりにならなかったときの落胆や怒りは大きくなるだけに、「いかに自分のネガティブな感情を分散させられるか」という視点を持ちたいところです。

「正論」や「正義感」に潜む無責任さ

一方で、世間の人々もここまでとりあげてきた線引きがあいまいなまま、自由に発言しているため、「自分が思っている以上にひどいことを言っていた」というケースをよく見かけます。

正論や正義感を言っているだけのつもりが、当事者を深く傷つけていた。「悪気はないのになぜだろう」と思うかもしれませんが、心のどこかに「どうせ会わない人、自分の生活に影響のない人だから」という無責任な感覚がある以上、言葉がきつくなりやすいことを心に留めておいたほうがいいでしょう。

もはや、有名人、メディア、一般人の3者とも「暗黙の了解」「自分の美学」「正論や正義感」などのきれいごとでは済まされないシビアな時代になりました。それぞれが自分と大切な人を守るために、自ら線を引いていく姿勢が求められているのではないでしょうか。

また、3者ともにそれができないなら、国がガイドラインのようなものを発信するのも1つの手段。すべての国民に共通する個人情報の保護やプライバシーの権利だけでなく、有名人に特化したガイドラインを出すことも、そろそろ必要なのかもしれません。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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