疑問だらけ羽生結弦さんの離婚騒動に欠けた視点 有名人、メディア、人々に求められる「線の引き方」

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ではメディアから行き過ぎた報道をされてしまったとき、有名人はどうしたらいいのか。

羽生さんは、「私が未熟であるがゆえに、現状のままお相手と私自身を守り続けることは極めて難しく、耐え難いものでした」「このような状況が続いていく可能性と、一時改善されたとしても再びこのような状況になってしまう可能性がある中で、これからの未来を考えたとき、お相手に幸せであってほしい、制限のない幸せでいてほしいという思いから、離婚するという決断をいたしました」などとコメントしていました。

「私が未熟であるがゆえに」と自分を責めるストイックな言葉も、「お相手に幸せであってほしい」というピュアな言葉も、羽生さんらしいものである一方で、世間の人々が「本当にそれでよかったの?」と感じてしまったことも当然のように見えます。ネット上には、羽生さんへの批判ではなく素朴な疑問として、「何で戦おうとしないの?」「やられっぱなしでいいの?」「離婚したあとでいろいろ言っても遅いよ……」などの声があがっていました。

なかには「いつもきれいごとばかり言っている」などと厳しい目を向ける人もいましたが、その人も羽生さんを批判したいというより、コメントにもどかしい部分を感じたためではないでしょうか。離婚したあとに「お相手は、家から一歩も外に出られない状況が続いて」と言うくらいなら、その前に何か行動を起こせなかったのか。あるいは、もし行動を起こしたけど変わらなかったのなら、それを言えば自分たちもSNS上などでメディアを批判して力になろうとするのに……。

自ら「NG」の線引きをすること

前述したように、樹木希林さん、賀来賢人さん、福山雅治さんらが自ら怒りの発信をしたことによってメディア報道は少しずつですが変わりはじめています。また、知人のある芸能人は、週刊誌記者らしき人を見つけると、自ら声をかけて素性を確かめたり、名刺をもらい写真を撮っておくなどの対策で、過剰な取材を抑制しているそうです。

さらには「もし家族の写真を載せられたら、さすがに訴訟はしたくないけど、逆に名前や写真をSNSにアップして告発してしまうかもしれない」とも言っていました。もちろんその行為については是非があるでしょうが、大切なのは自ら「NG」の線引きをすること。

羽生さんに限らず有名人の多くは、「こんなことで怒りたくない」「そんな姿をファンに見せたくない」のでしょうし、「精神的に追い詰められて身動きが取れない」というケースもあるでしょう。しかしそれでも行きすぎた報道に関しては、自ら伝える姿勢が最速かつ最大の改善方法になることは確かです。

もし自ら発信したくないのであれば代理人を立てて、第三者からの発信にしてもらうなどの手段もあり、さらにそれも嫌なのであれば、海外の生活を選んでストレスやトラブルのリスクを減らす有名人も少なくありません。

最近はアイドル的な人気のある芸能人に限らず、「結婚相手の出身地や呼び方、子どもの性別すら公表しない」という人が増えています。「家族に関してはこれ以上の報道は控えてほしい」という明確な線引きであり、「その『NG』ラインを超えてきたら強い姿勢で臨みますよ」という意思表示とも言えるでしょう。

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