疑問だらけ羽生結弦さんの離婚騒動に欠けた視点 有名人、メディア、人々に求められる「線の引き方」
そもそも「有名人のプライベート報告」「メディア報道」「ストーカー行為や誹謗中傷」は、まったく別のテーマですが、問題を複雑化しているのは、それぞれの“線引き”があいまいであること。意識、無意識を問わず、有名人、メディア、世間の人々の3者それぞれが、「OK」と「NG」の明確な線引きができないことが、ストレスやトラブルの起点になっています。
まずここまで最も活発な議論が飛び交っているメディア報道について。
羽生さんは自身のみならず、親族や関係者、一般人の妻とその親族や関係者に対する「許可のない取材や報道」「生活空間の侵害」を訴えていましたが、これは言語道断であり、メディア自らが今すぐに「NG」の線を引かなければいけないところでしょう。
現在はメディア報道に端を発したネット上の誹謗中傷が深刻であり、「自分たちは『知りたい』という声に応えて仕事で行っているだけだ」という単純な“公益性の主張”が通用しない時代。また、「これくらいなら“有名税”の範囲だから訴えられないだろう」「これくらいのことをしなければこちらも食っていけない」などの見立てや言い分も昭和時代から続く悪しき習慣であり、むしろ「各メディアがオンライン化されたことで、当事者が傷つけられてしまうリスクが格段に上がっている」ことはスルーされています。
結婚相手の実名を早々に報じた地方紙「日刊新周南」は、「彼女も地元では有名人だった」こと、「地元で祝福の声があがっていた事実を報じただけである」こと、「本人からクレームが来ていない」こと、「結婚相手を隠し通すことは女性蔑視である」ことなどを主張したと報じられていますが、事実ならこれも論を俟たないレベル。現在は表に出る活動をしていない一般人を実名で報じることの危うさを認識できていないのでしょう。
家族の報道に対する有名人の怒り
実際、「日刊新周南」が報じたあと、複数の大手メディアが一斉に彼女のことを報道。私があるメディアの関係者に尋ねたところ、「すでに情報はつかんでいたが、どのタイミングで、どう書くかを様子見していた」などと語っていました。「すでに『日刊新周南』が報じているから記事にしていいし、こちらに責任はない」とみなして追随した大手メディア側の問題も大きいものの、そのきっかけを作った「日刊新周南」が批判されるのは仕方がないように見えます。
たとえば、その報道がきっかけとなって、彼女の実家に羽生さんの熱狂的なファンが押し寄せたり、家族に危害を加えたら責任を取れるのか。誹謗中傷や、家族の実名、住所、電話番号などの個人情報をネット上にさらされるリスクなども含め、全国の人々が地方の記事にもふれられるようになった今、「地元の宝を祝福しただけ」という主張は通用しないのです。
事実、過去には芸能人夫妻の子どもが誘拐されたなどのケースがあり、樹木希林さんが「(報道がきっかけで)子どもが誘拐されたら責任を取ってもらいます」と怒りをあらわにしたこともありました。
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