三浦貴大の神セリフ「貧困は個人の問題じゃない」 ドラマ「東京貧困女子。」監督×脚本家対談【後編】

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高羽:特に「女子」と入れる点については、かなり慎重に検討しましたよね。はたして「女子」とひとくくりにしていいものだろうか。貧困のために性産業に入った当事者のエピソードが、「女子」という言葉があるために、かえって性的搾取の対象となることに繋がりはしないだろか。かなり逡巡しましたが、それでも「女子」としたのは、日本の社会構造は、まだまだ女性にとって不利にできていると感じているからです。

少しでも「当事者意識」をもってもらえたら

青木:タイトルは「きっかけづくり」なんですよね。視聴者を引き付けられれば何でもいい――というのは少し言い過ぎかもしれませんが、問題は、いかにタイトルでスルーされず中身にまでリードできるか。「女子」と謳ったこのドラマを見て「これは特殊事情を抱えた一部の『かわいそうな女の子たち』の話ではない」と気づく入り口に立ってもらうことが大事なんだと。

高羽:実は、男性もまた、いつ貧困を生む社会構造の犠牲になるかわからない。女性も、男性も、明日の自分かもしれないと実感したら、そこで自己保身に走るのではなく、さらに一歩踏み込んで考えてみていただきたいですね。

青木:本当にそう思います。「ひょっとしたら、自分の身近な場所にも似たような状況に陥っている人がいるかもしれない」「いま困っている人たちに、自分から手を差し伸べられるかもしれない」「もし自分自身が困ったら、誰かから手を差し伸べてもらえるかもしれない」などとさまざまに考えてみる。

こうした意識が生まれることが、やがては社会をよりよくする一歩、二歩に繋がっていくんだと思います。「知らないこと」について考えることはできません。とにかく本作をきっかけに、「実はこんなことになっている」という現実を知っていただければと思います。

貧困は個人の問題じゃない(写真:WOWOW)

高羽:「貧困は個人の問題じゃない」――これは﨑田のセリフなのですが、個人の問題じゃないのなら、自分たちが「当事者」としてコミットして社会を変えていくことはできると信じたいですね。そんな方向に、このドラマを見た人たち、昨日までは「貧困なんて他人事だと思っていた」人たちの明日からの意識や行動が、少しでも転換するきっかけになれたらと願っています。

この記事の前編趣里の迫真演技が伝える「貧困に喘ぐ女性の現実」

青木 達也 監督

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あおき たつや / Tatsuya Aoki

大学卒業後、制作会社でバラエティやドラマの制作に関わる。ドラマでは主に中山史郎監督に師事し、助監督として多くの作品に参加。連続ドラマやSPドラマを経験し、2011年テレビ東京ドラマ24「ここが噂のエル・パラシオ」で監督デビュー。その後、読売テレビ「遺産相続弁護士・柿崎真一」やテレビ朝日「トットちゃん!」、FOD「JOKER×FACE」、日本テレビ系「ノンレムの窓」、テレビ東京系「週末旅の極意〜夫婦ってそんな簡単じゃないもの〜」などを監督。2022年よりフリーランスとして活動の幅を広げている。

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高羽 彩 脚本家

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たかは あや / Aya Takaha

早稲田大学在学中、2005 年にプロデュースユニット「タカハ劇団」を旗揚げ。以降、全ての主宰公演で脚本・演出を務める。日常に普遍的に存在する小さな絶望や、どんな壮絶な状況でも変わることのない人間の些細なあり方、生き方を笑い飛ばしながら掬い取るリリカルでクールな作風。主な作品に【舞台】『耳なし芳一』脚本、『魔法使いの嫁』脚本・演出、【TV】NHK『ここは今から倫理です。』『千住クレイジーボーイズ』、【ラジオ】NHK-FM「青春アドベンチャー」、【アニメ】『サイコパス』『魔法使いの嫁』シリーズ、【ゲーム】の構成・脚本、【書籍】『PSYCHO-PASS サイコパス』(角川文庫)、【雑誌】月刊文芸誌『すばる』でコラム連載など。

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