青木:高羽さんは一昨年の年末に、女性のための法律相談にも参加して、支援団体の方々や貧困当事者に取材しましたよね。僕は行けなくて取材の音声を聞いただけだったんですけど、そこですごく記憶に残ったのが、リサイクルの衣服や食べ物などさまざまな支援物資が集まっているなかで、一番先になくなるのが「花」であるという話です。
高羽:はい。支援団体のお手伝いをしたとき、本当に、命にかかわる衣食に比べて、一番後回しにされがちな嗜好品に人気が集まるんです。相談に訪れる女性たちは金銭や家庭の状況的に困っているだけでなく、心が飢えていて、だからこそ、心の安らぎとなる花を欲しがる人が多いんだと思いました。
青木:僕も胸に迫るものがありました。生活に切羽詰まっていても「花を飾りたい」「花を愛でたい」という気持ちは残っているんだということに、僕が感じたのは、女性のしなやかさや強さ、たくましさです。それは、すごく大変な状況にあるんだけど芯があって、生きていくことに対して真面目という、高羽さんが練り上げたキャラクターにも現れていると思います。制作サイドでは一貫して、貧困女性たちを弱々しい人たちにはしたくないという思いがあったので。
がんばる姿を「美談」にしてはいけない
高羽:そうですね。ただ、弱々しいだけの人にはしない一方、たくましさを変に美談として仕立て上げることは絶対に避けなくてはいけないというのもありましたね。
青木:はい。たとえば、ドラマの第2話で、主人公の摩子(趣里・演)が次の取材先に向かう際のワンシーンに、この制作サイドの思いが出ていますよね。貧困女性たちのことを「たくましい」と表現し、「私だっていざとなったら風俗でも何でも……」などと言い放って、共同取材者である﨑田(三浦貴大・演)の逆鱗に触れるシーンです。