「具体と抽象」で朝令暮改の上司の謎が解ける なぜあの人は言うことがコロコロ変わるの?
ここでは、仮に誰かが先生の朝の言葉を録音していたとしましょう。
それを再生してみると、先生は今朝、生徒たちに「放課後までに教室をきれいに片づけておいて」と言っていたことがわかりました。ここでのポイントは先生が実際に発した言葉は「教室を片付けて」という言葉だったのですが、放課後に先生が「言ったはずだ」と思っていたのは正確には「掃除用具をしまって」という言葉でした。要は「教室を片付ける」と「掃除用具をしまう」は同じなのか違うのかということです。
言葉ってムズカシイ…
この話の構図を具体と抽象の関係で表現してみると、縦軸は具体と抽象の軸で、上が抽象で下が具体となります。
「末広がりの三角形」になっている理由は、抽象概念というのが複数の具体的事象を「まとめて一つ」と扱うところから来ています。ここでの具体と抽象の関係は「1:Nの関係」(一つの抽象に対して複数の具体が対応する)になっているということです。
(*外部配信先では図や画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
「教室を片付ける」と「掃除用具をしまう」は確かに文字通りの言葉としては違うかもしれません。ただし、「掃除用具をしまう」は「机と椅子を整列する」「教科書をしまう」「ロッカーを整理する」などと合わせて「教室を片付ける」ために具体的にすることの例になっています。
つまり、「教室を片付けて」という抽象の言葉を使った先生は当然その中には「掃除用具をしまう」ことも含まれているから、それも含めて「今朝言った」という認識になったのです。
このように、言葉には文字通りに口から発したこと(=具体)とその意味するところ(=抽象)という2つの意味があることになり、このような性質が「言った・言わない」というコミュニケーションの行き違いを生み出す原因の一つになっているのです。
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