「具体と抽象」で朝令暮改の上司の謎が解ける なぜあの人は言うことがコロコロ変わるの?

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この例から言えるのは、具体を見ている人は「すべてのものが違って見え」、逆に抽象を見ている人は「すべてが同じに見える」のです。

「すべてが違って見える」ということは、当然「先週言ったこと」と「今週言っていること」は違うし、「昨日言ったこと」と「今日言っていること」は違うのです。

先生と生徒の関係を上司と部下の関係に置き換えて、より仕事に近い場面での別の例を取り上げてみます。

上司が結局言いたかったことは何か?

たとえば上司から「この前作ってもらった資料だけど、○○に関連した用語を赤字に直してくれない?」と3日前に言われて提出したら、一昨日になったら「やっぱり下線を引いて」、さらに直して持っていくと今度は昨日になって「やっぱりフォントを変えて」と言われたとします。具体のレベルだけ見ているのであれば「赤字」と「下線」と「フォント変更」は「まったく違うこと」になります。ところがこの上司が言っていたことは、単に「当該の用語を強調して目立たせたい」のだということは少し考えればわかるでしょう。

怒る上司と怒られる部下の図
「資料を見易く」と「文字を赤に」の関係(『13歳から鍛える具体と抽象』で使用した図を一部編集)

このように、「他人の言うことがコロコロ変わる」のを目にしたり耳にしたりしたときに、具体だけを見ている人は「いったい何を言いたいんだろう?」「混乱するな」とストレスに感じるかもしれません。ところが抽象的にものごとをとらえようと常に意識している人にとっては、これは本当に大事なことをつかむための絶好のチャンスと変わります。

ここでも具体だけを見ている人と「具体と抽象」を意識している人とでは毎日の過ごし方で圧倒的な差がついていくことがわかるのではないでしょうか。

実は「言うことがコロコロ変わる」は見えない大事なことを見つけるための絶好のチャンスだったのです。

私たちの言っていることは「時と場合等の状況によって常に変化する」(具体レベル)のに、それを言葉に表現した瞬間にあたかも同じものであるかのように「冷凍保存されてしまう」のです。この話は人の言うことがコロコロ変わる根本的なメカニズムそのものです。

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