イオン、「直営は諦めない」衣料品改革次の一手 まず売り場を変えて、従業員の意識を変える
こうした競合他社とは対照的に、直営での衣料品展開にこだわり続けるイオン。今回手をつけたのは、商品ではなく売り場、つまり商品の「見せ方」だ。
衣料品改革のリーダーであるイオンリテールの森脇夏樹氏によると、イオンには機能性やデザイン性のある商品を取りそろえている自負がある一方、客からは「シニア向け」というイメージを強く持たれているという。「若い方に自分たちの『買い場』と思ってもらえていない」(森脇氏)。
売り場を6つの専門店に分割
新モデルでは顧客や従業員へのアンケートをもとに、従来の「平場」に商品を並べる販売手法をやめた。平場だと商品ごとの世界観が客に伝わらず、若者向けの商品も平場全体の「シニア感」で埋もれてしまうからだ。
そこであえてシニア向けの衣料品を独立させ、それ以外の売り場と明確に分けた。さらにカジュアルやフォーマル、スポーツなどの生活シーンごとに、平場だった売り場を計6つの専門店に分割した。それぞれの間には壁を設置し、売り場ごとに照明や装飾、タイルの色を変え、違う店舗に見えるように構成している。
いわゆる買い回りはしにくくなるが、こうすることで客に「自分の買い場はどこか」を直感的に理解してもらうことを狙う。リニューアルから数日後に浦和美園店の売り場を訪れた20代の女性客は、「今までは(イオンの直営売り場に)自分の好きな服はないと思っていた。モールのほうでばかり買い物をしていたが、これからはこちらも利用してみたい」と話す。
商品については、このモデルのために新しく導入したものはほぼなく、既存の商品群の組み替えにとどまっている。それでも森脇氏らが改革の手ごたえを語る背景には、従業員の意識が変わってきたことがある。
これまでも直営衣料のテコ入れは何度も試みられてきた。しかし本部の指示を現場まで浸透させることは難しかった。例えば「衣料品の中でもこのカテゴリーは接客重視」と本部が定めても、忙しい中で、あるいはなぜそうしなければならないのかが伝わらず、現場で指示が徹底されないことが多々あったという。
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