「ちゃんとしなさい」と叱る親の子ほどできない訳 言葉がけは「ロジカルに」「フルセンテンスで」が基本
「ちゃんと宿題をやりなさい!」「ちゃんとした格好をしなさい!」「ちゃんと挨拶をしなさい!」
子どもに注意をするとき、「ちゃんと」という言葉を使っている親御さんがとても多いように感じます。「ちゃんと」「きちんと」「しっかり」などは、そのときの状況によって定義の変わる「あいまい言葉」です。この言葉を使うことによって、子どもの脳は不安になり、混乱し、脳の成長が阻害されてしまいます。
子どもは「あいまい言葉」が判断できない
「ちゃんと」などの「あいまい言葉」が判断できるようになるのは、大人になってからです。前頭葉は、論理的な思考をする、行動のために計画を作る、自己を客観化するなどの「高次脳機能」と呼ばれるさまざまな機能をつかさどります。
大人は前頭葉がすでに十分に発達しているために、「あいまい言葉」にあたる内容を、前頭葉を使いながら状況に合わせて理解することができます。しかし、小学生の前頭葉はまだ発展途上です。大人のように、「あいまい言葉」を状況に合わせて判断し、行動するのはとても難しいことです。
コウタは、発展途上にある前頭葉を使って、自分なりに「ちゃんと」片づけているつもりだったのでしょう。しかし、母親に毎回ダメ出しをされて、すっかり自信をなくしてしまいました。そのような状態が長く続くと、親に反抗するようになってしまうケースは決して珍しくありません。
ほかにも、私たちのもとを訪れる親御さんの中には、こんなケースがありました。子どもが玄関先にランドセルを置きっぱなしにしていたので、「ちゃんと片づけなさい」と注意したら、今度はリビングにポンと置いたというのです。これもコウタのケースと同じで、親は「子ども部屋」に片づけるのが「ちゃんと」だと思っています
が、子どもは「リビング」が「ちゃんと」した場所だと思ったのでしょう。しかし、親御さんはそのことがわからず、さらに、「何でちゃんと片づけないの!」と子どもを追い詰めてしまいました。
「ちゃんと」という言葉でどれだけ注意しても、子どもは何をしていいかわからず、混乱していくばかりです。このようなディスコミュニケーションを続けると、親子の関係性はどんどん悪化してしまうでしょう。