最後の三つ目は、家電量販以外の異業種分野の取り組み強化だ。今月、資本業務提携を決めたソフトバンクの商材・サービスや、2011年に買収し、現在は「ヤマダ・エスバイエルホーム」と名乗る旧エス・バイ・エルが展開する住宅部門との連携がカギになる。住宅事業は苦戦が続いているものの、電力自由化や省エネの流れなどもあり、通信やロボットなどに強いソフトバンクと組むことでチャンスはある。単に家電だけを販売するのではなく、異業種をふくめ、商品の複合的な使い方を提案していこうとしている。
それにしても、ネットに押されている本と家電のリアル店舗の特徴とは何だろうか。筆者の見解は両者とも「自社都合で陳列している」という点だ。筆者はほぼ毎日書店を訪れるが、お客にはいっさい関係ないのに、出版社ごと、フォーマットごとに本が陳列され、テーマごとに文庫から新書、ハードカバーまでを並べていない店が多い。家電量販店では、冷蔵庫とオーディオ機器とハードディスクはまったく別の専門コーナーに置かれている。ライフスタイルやデザイン性によって、同一の部屋に置いたときの印象が異なり、あわせて商品選択したいというニーズには応えられていない。
東京・代官山の蔦屋書店や二子玉川(蔦屋家電)がライフスタイルを提案する家電の陳列で話題になったのは、それだけ消費者がそうした提案に飢えていたからだ。また、個性的な書店が人気を博すのも、その棚にストーリー性があるからにほかならない。
ネットからリアルへの誘導も
「ショールーミング化」の逆現象としての「ウェブルーミング」なる言葉が出てきているのも見逃せない。これは書籍などを考えるとわかりやすい。ネットでは書籍の内容を立ち読みできるものの、やはり書籍は書店で見るのが一番だ。そのまま左右に並んでいた書籍をまとめ買いする場合もあるだろう。
加えて、直接触れたり、詳しく説明を聞いたり、イベントなどに参加できたりする。リアルには存在しないネット店舗よりも、対面には安心感がある。いわばネットからリアル店舗に誘導するのが「ウェブルーミング」だ。
セブン-イレブンやウォルマートは、ネットとリアルの境界を融解する試みとして「オムニチャネル」を推進している。ネットで注文して、近くの店舗に取りに行く。運ぶのが重い商品は、自宅への宅配も頼める。流通企業のサービスをお客にとってシームレスにつなげていける。現時点でこのオムニチャネル化を推し進められているのはコンビニくらいだろう。
ヤマダ電機でも、どこの家電量販店でもいい。消費者をドキドキさせてくれる設計の家電量販店が出てこないかと、筆者は期待している。だって、猫も杓子も、「高齢者」「外国人旅行者」頼みではさみしい。
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