自民党の最大派閥である安倍派に所属し参議院を仕切る世耕氏を味方につけられていないことは、岸田氏にとって相当にまずいはずだ。不人気で無策な岸田首相から、安倍派として支持しないとは言わないまでも、ある程度の距離を取ることを示したことは、世耕氏にとって政治的な得点になったのではないか。
ちなみに、岸田首相が人間でありながら「メガネ」呼ばわりされる理由は、世耕氏が指摘するとおり、リーダーとしての「姿」が国民から見えていないからだろう。いかにも官僚が書いたとおりに「しゃべらされている」印象を与える岸田氏の記者会見の発言や国会答弁は、まるで空箱がしゃべっているようであって、表情にも顔にも注意が向かない。それ自体は細いフレームなのに、顔が見えないから、メガネだけが印象に残る仕掛けである。
加えて、過去の自民党総裁選での発言や、財務省の影響が強いとみられる政権運営、防衛費の増額や、「異次元の少子化対策」の財源に対して垣間見える増税姿勢などが加わって「増税メガネ」があだ名になったものだろう。
では、今回の減税案があだ名の払拭に役立つかというと、まったくダメだろう。「増税メガネ」というあだ名に共感していた民は、例えば次のように言うのではないか。
「増税メガネの所得減税は、どうせあとから増税して取り返す“偽装減税”にすぎない。だまされないぞ」と。
今回の所得減税案のどこがダメなのか
「偽装減税」とまで今の段階で言うのは、さすがに悪意がすぎるかもしれない。しかし、今回の減税案は、経済的にも政治的にもまったくダメな代物だろう。
では「金額4万円、一律定額減税、期限1年、低所得者に7万円」のどこがダメなのだろうか。最大の欠点は「期限1年」だ。
経済的には、1回限りの給付金では恒常的な所得の増加期待につながらないので、多くが支出されずに貯め込まれてしまって消費にも景気浮揚にも効果が乏しいことが予想される。コロナ禍の最中の一時給付の効果が、いかにショボかったかを思い出すといい。
また、「4万円」にも関係することだが、今回の減税は税収の上振れの還元策だということになっている。しかし、「今年はこんなに税金を取る予定ではなかった。見込み違いがあったのでお返しします」と言われて、国民はうれしいだろうか。
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