小野寺五典氏「台湾有事なら米中は軍事衝突へ」 迫り来る「眼前の危機」に日本はどう備えるか

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塩田:中国の習主席の最近の動きから、台湾有事に関して何か特別な変化を感じますか。

小野寺:一つ一つの変化を見逃さないことも大切ですが、実は外交関係や政治の発言、政策は一瞬にして変わります。大事なのは防衛能力の高さです。侵攻に備えた防衛装備は準備に時間がかかります。私たち、安全保障に責任を持つ立場は、防衛力整備は何を目的として行うかに着目すべきです。外交が改善されたとか、向こうの首脳がこう言っているというのは、ある面、一瞬に変わる話で、相手の防衛能力を見て判断すべきだと思います。

塩田:習体制の中国にとって、台湾統一はどれだけ大事な目標か、その判断に基づいて将来の台湾統一のためにどんな準備を行っているのか。その点については。

小野寺:習主席は中国共産党の1つの党是として台湾統一を掲げています。中国という大きな国が、民主的な形ではない一党独裁体制で存在しているのが正しいと内外に示そうという考えがある。その延長線に、台湾統一があります。歴史的に見れば、台湾はかつての中国共産党と国民党との戦いの中で、未決着の残された課題です。中国共産党による一党支配の正当性を明確化するためにも避けられない課題という意識でしょう。

台湾有事になれば、米中軍事衝突は不可避

小野寺五典氏の本人写真
小野寺 五典(おのでら いつのり)/1960年宮城県生まれ。97年より衆議院議員(8期)。外務副大臣や防衛大臣を歴任。現在、自民党安全保障調査会長を務める。

塩田:アメリカは1970年代の「米中和解」「国交正常化」の後も、一方で台湾と交流を持ち、台湾支援の路線を維持して現在に至っています。2020年代に入り、アメリカの外交力、軍事力、経済力が弱体化しているという見方もあります。パワーバランスの面での米中関係の変化を見て、中国が「台湾統一の好機」と判断している可能性はありますか。

小野寺:当然、そうだと思います。中国が台湾に武力侵攻した場合、弱体化したアメリカは、ウクライナ支援と同じように、防衛装備などは送るけれども、一緒になって戦うことはしないことが明確になったら、中国としては、台湾侵略がしやすくなる。中国はそういうことを想定しながら、アメリカの出方をつねに見ていると思います。

塩田:もし将来、台湾有事が現実となるとすれば、どんなシナリオが予想されますか。

小野寺:有事の場合、アメリカの政治スタンスは台湾支援で、これは揺るがないと見ています。支援の仕方は2つあり、1つは米軍が台湾軍と一緒に中国軍と戦うこと、もう1つはウクライナ支援と同じような形で物資の支援にとどまるというやり方です。

といっても、台湾はウクライナと違って島国です。後者の物資の支援でも、中国に制海権・制空権を取られている中で、米軍が物資の支援をすれば、必ず中国軍と衝突します。制海権・制空権を取られたら、アメリカは何もしないということはない。米中が衝突する事案は必ず起きると私は思います。その場合、米中の全面戦争につながるかどうか。衝突は局地的で、大きな外交問題になるのではないかと見ています。

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