小野寺五典氏「台湾有事なら米中は軍事衝突へ」 迫り来る「眼前の危機」に日本はどう備えるか

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小野寺:アメリカとの関係は、戦闘機の開発について、今までの主力戦闘機はアメリカと一緒に造ってきましたが、今回、アメリカとは違う枠組みになる。それについて、アメリカもしぶしぶ了解をしてくれたと思います。

日米同盟との関係では、NATOは域外から出られませんので、日本はNATOに加盟できません。日本が今回、やろうと思っているのは、あくまでもNATOの一部の国と開発した次期主力戦闘機をNATOで使ってもらうことです。特に条約上の話ではないので、日米同盟とは切り分けて考えていけると思います。

塩田:台湾統一を唱える中国に対する抑止力という点では、QUADの連携や、「自由で開かれたインド・太平洋」という考え方もありますが、日本の安全保障政策、あるいは外交政策として、各国との連携による対中国の抑止力を高めるには何が必要ですか。

民主的な台湾は日本の国益

小野寺:中国と台湾が民主的に統一する場合は、日本は妨げる必要はないと思います。ですが、武力を使って統一を図るのは、今の社会で、あってはならないことで、それには強く反対する。武力統一をさせないために、台湾を支援するチームがしっかりしていなければならない。中国は今後も民主的手続きで台湾と協議するのが基本だと私は思います。

この地域で紛争が起きなければ、日本とすれば、中国とは、隣国で歴史的にも近い国ですから、今までどおり、お互いにウィン・ウィンの経済関係を続けていけばいいと思うんです。中国を敵視するのではなく、中国が台湾統一に関して武力を使うことはやってはいけないと判断する。そのことが重要だと思います。

塩田:武力行使の問題もありますが、台湾は共産党支配の中国本土とは政治体制、民主主義に関する考え方が根本的に違っています。日本やアメリカは同じ価値観を共有する台湾をどうやって守るかという点も重要なポイントだと思います。

小野寺:まったくそうだと思います。香港の例を見ても明らかなように、中国の行政権が及ぶようになったら、まったく中国と同じ姿勢を取るようになり、報道規制が強まった。日本人はああいう価値観の国に組み入れられることには絶対反対だと思います。

塩田:とはいえ、台湾統一を言い続ける中国が、台湾を香港と同じように扱い、台湾有事を起こしたときに、日本は実際にはどうすべきですか。

小野寺:台湾には本省人と外省人の両方がいます。中国と違って、私たちと同じように選挙で選ばれる民主政治、報道の自由、経済活動の自由がある。だから、私たちは台湾を仲間と思っている。そこに中国が武力で侵攻して共産党の独裁体制の下に置こうとすることは、日本が次に同じ立場だったら、絶対にあってはならないことです。中国が台湾にそういう行動を起こすことに関して、日本は声を上げて反対しなければいけないと思います。

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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