小野寺五典氏「台湾有事なら米中は軍事衝突へ」 迫り来る「眼前の危機」に日本はどう備えるか

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塩田:中国は台湾周辺の海域・空域の制海権・制空権を今は握っていないと思います。台湾有事は、まず中国が制海権・制空権を奪おうとするところから始まるわけですか。

小野寺:中国は今、アメリカに対して近接拒否のさまざまな装備を持っています。1995~96年の台湾海峡危機のとき、アメリカの空母艦隊が複数出た。これでは制海権・制空権を維持できないと思って、中国は引き揚げた。

次は中国はその逆をやってきます。アメリカの空母艦隊は近接できないと思います。そうなると、日本、フィリピン、太平洋のグアムやハワイの基地が主力になる。その意味で、以前と違って、アメリカの空母艦隊が出ていく話ではなく、日本などの拠点からさまざまな装備が出ていくことが当然考えられます。

台湾有事を未然に防ぐ「チーム作り」を

塩田:その場合、日本、アメリカ、台湾は、有事防止のために事前にどういう準備を。

小野寺:台湾有事が現実となったとき、どうやって戦って勝つかということの前に、有事を起こさせないことが一番です。そのために、アメリカだけでなく、価値観を同じにする多くの国が団結して、いざというときに、それぞれの立場で台湾を支援するチーム作りができるかどうかです。それが台湾有事を未然に防ぐことになると私は思います。

日本が今、努力しているのは、たとえばQUAD(日米豪印4カ国)です。これは安全保障の取り組みではないのですが、外交上、1つの大きなチームになります。

もう1つ、日本が努力しているのはNATO(北大西洋条約機構)との関係強化です。NATO加盟の31カ国の軍事力、軍事装備は世界の7割くらいの金額になるといわれています。NATOがアジア地域に一定のプレゼンスを示すことは大きな抑止力になります。

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