日本人は低い食料自給率の深刻さをわかってない 製造業輸出を優先した結果、食品安全保障は脆弱
日本の食料自給率が依然として4割以下の低い水準にとどまっている。ロシア・ウクライナ戦争が始まって以来、世界的に食料自給に対する危機感が高まっている中で、政府や自民党は防衛費と少子化対策に躍起になっている。国民の命を守る食料の確保は十分なのか。日本政府の「食品安全保障」を検証する。
食料国産率も半分に届かない
農林水産省の「知ってる?日本の食料事情2022」によれば、日本の食料自給率にまつわる数字は次の通りだ。
●食料国産率……47%(カロリーベース、生産額ベースでは69%)
●飼料自給率……25%
食料自給率が輸入畜産物の生産分を除いているのに対して、食料国産率は畜産の飼料が国産か輸入かを問わずに計算した数字となる。そこで「飼料自給率」という指標も参考にする必要が出てくるのだが、こちらはさらに低くて25%しかない。
ロシア・ウクライナ戦争が始まって以降、飼料の国際的な逼迫がニュースになるが、飼料の輸入が止まれば、日本の家畜は単純計算で4分の3が飢えることになる。先進国のなかでも低い数値と言っていいだろう。
コメや小麦、トウモロコシなどの穀物だけに絞った「穀物自給率」も日本は28%しかない。農林水産省の「諸外国の穀物自給率(2019年 試算)」(2022年6月1日、現在、日本は年度、日本以外は暦年)によると、179カ国・地域中127番目、OECD加盟国38カ国中32番目となっている。韓国やハイチと並ぶ低水準だ。
世界的に最も穀物自給率の高い国は、ウクライナで440%。ロシアがウクライナを狙うのも納得のいくところだ。品目別自給率というデータもある。同じく農林水産省の食糧需給表2021年度版によると、日本の品目別食料自給率は次のような数字になる。
●野菜類…… 79%
●いも類…… 72%
●牛乳・乳製品…… 63%
●魚介類…… 59%
●肉類…… 53%
●果実類…… 39%
●砂糖類…… 36%
●油脂類…… 14%
●豆類…… 8%
要するに100%に達しているもの、超えているものはほとんどないと考えていい。これでは食料自給率が100%に達するもの=自給できているものはほとんどないと言っていいだろう。
そこで心配なのが、戦争や紛争など「有事」の際の対応法だ。ドイツは石油の34%、天然ガス55%、石炭45%をロシアに頼っていたために、厳しい状況に陥った。ただ、ドイツの食料自給率は84%(2018年、カロリーベース)。対して日本のエネルギー自給率は11.8%(2018年度)しかない。
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