日本人は低い食料自給率の深刻さをわかってない 製造業輸出を優先した結果、食品安全保障は脆弱

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政府は、これまで食料安全保障とは言いながらも、実際には、有事に対する備えは皆無に等しい。太平洋戦争では、国民総出で小学校の土壌を耕して芋を植えたが、現在はアスファルトで覆われており、ゴルフ場ぐらいしか役立ちそうなものはない。

深刻なのが、シーレーンが破壊されて石油や肥料、農薬が一切輸入できなくなった場合だ。紛争が長引いた場合、農業機械すらない中で国民に提供できる食料が一体どの程度あるのか……。有事の際には、国民に「配給通帳」が配られて、配給制度をスタートさせるのが常套手段だが、マイナンバー制度ひとつ義務化できない現在の自民党政権に、その意思があるのか疑問になる。

農産物輸出国への転換が結果的に国民を飢えから救う?

いずれにしても、これからできる対策としては、次のようなものが専門家によって指摘されている。筆者や関係者の意見も混ざってくるが、代表的なものピックアップしておこう。

① コメの輸出国になり、有事には国民に配給する

コメに対する補助制度などを廃止して、農家がジャポニカ米を自由に輸出できる体制にする方法だ。万一のときには、輸出分を国内に回すことができる。円安が進むこれからは、ジャポニカ米が世界中で売れるはずだ。誰でも気軽に農地を貸し借りできるように、農地という目的は限定したうえで通常の不動産同様に自由化することが求められる。

② 専業農家への直接補助に切り替える

日本の農業政策の最大の特徴は、ほとんど農業をしない兼業農家への補助が多いことだ。兼業農家への補助を打ち切って、専業農家に対して重点的、直接的な支援を行うことで、日本の農業の生産効率を上げられる。

③ スマート農業を取り入れて、生産性を向上する

オランダは、九州とほぼ同じ面積ながら、アメリカに次ぐ世界第2位の農産物を輸出している。付加価値の高い農産品を作るために、様々なミッションが行われている。衛星による監視やドローンなどの最先端技術を駆使して、「スマート農法」の充実を目指すべきだ。

日本の製造業は、IT化やデジタル化で後れを取り苦境に立たされているが、実は農業でも日本は大きく先進国のグローバルスタンダードから後れを取っている。農業生産で先端技術を使うためには、大規模農法にするしかないのだが、休耕地を簡単に貸し借りできる制度に転換することが求められている。しかし、ここでもJA農協などが立ちはだかっていると指摘されている。

農地の売買や賃貸をするのに、農業委員会の許可が必要になっている現行制度を廃止して、自由に農地を貸し借りできるようにすれば大企業が参加できて、大きな資本を投下できるはずだ。台湾有事が起きてからでは遅すぎる。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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