経済衰退・少子化「非正規雇用が元凶」という俗説 増えた非正規はほぼ「45歳以上の女性と高齢者」
そもそも、世界的に出生率が下がっています。日本の出生率が人口置き換え水準を下回ったのは1974年で、非正規雇用の増加が始まるずっと前からです。世界を見渡すと、最も出生率が低いのが日本も含む東アジアです。これは非正規雇用とは関係がありません。
正規雇用者の数は減っていますが、これは人口減少の影響です。
非正規雇用者に関しては、男性のほうはピークから減少していますが、1990年代以降は、子育てを終えた女性と高齢者の男性の労働参加率が上昇し、全体の雇用者の中で占める割合が大きくなったというのが、ここ数十年の日本の労働市場の実態です。
つまり、非正規雇用者の増加は、結婚率の低下や少子化とはまったくと言っていいほど関係がないのです。
また、ここ数十年の間で、企業や労働者の意識が大きく変化し、働き方が多様化したことが、非正規の増加の一因になっている点も看過すべきではないでしょう。特に若い世代はフルタイムで働くよりも、時間にとらわれない働き方を求めて、あえて非正規雇用で働くことを選ぶ人が以前に比べて大幅に多くなっているのは間違いないでしょう。
あえて非正規雇用を選ぶほうが得な制度
労働参加率が高くなるのは、本来望ましいことです。しかし日本の場合、労働参加率が高くなったことを、もろ手をあげて喜ぶことはできません。なぜならば、非正規雇用者の多くが低い賃金で働いているため、平均給与や生産性を低下させる要因となっているからです。
特に45歳以上の女性の多くが低い賃金で働いていますが、このような事態はいわゆる「年収の壁」が招いていると考えるのが妥当でしょう。
ご存じのように、非正規雇用で働く多くの女性は、扶養控除内で働いています。なぜならば、収入が増えると扶養控除から外れてしまい、手取りの収入が減ってしまい、いわゆる「働き損」の状態に陥ってしまうからです。
そのため、女性たちの多くがフルタイムで働くことを避け、非正規雇用を選択するのです。つまり、扶養控除こそが日本における非正規雇用者の増加の主要因なのです。
次回は扶養控除について詳しく考察します。
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