変容する規範、「特権」を奪われ不満な男性たち 『韓国、男子 その困難さの感情史』書評

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『韓国、男子 その困難さの感情史』チェ・テソプ著
韓国、男子 その困難さの感情史(チェ・テソプ著/小山内園子、すんみ 訳/趙 慶喜 解説/みすず書房/3300円/312ページ)
[著者プロフィル]최태섭(チェ・テソプ)/1984年生まれ。文化評論家、社会学研究者。ジェンダー、政治、労働問題に重点を置き、文化と社会を批評するコラムを「京郷新聞」や『時事IN』などさまざまなメディアに寄稿している。

日本と韓国は、OECD(経済協力開発機構)加盟国内で比較すると、性別による所得や管理職率の格差が最も大きい部類の国だ。伝統的な性別規範が人々の意識に残り続けており、ジェンダー平等は達成されていない。

そうした中、今日の東アジア社会ではフェミニズムやジェンダー平等への強い逆風が吹いている。逆風の源泉は、伝統的規範による恩恵に与(あずか)ったままリタイアしていく高齢者ではなく、変容の最中で「特権」を奪われ男性の義務だけを押し付けられるとの不満を抱く若年層の男性たちだ。

韓国男性の「憂鬱さ」記す感情史

著者は韓国の社会学をバックグラウンドに持つ文化評論家で、自身も男性だ。本書は、朝鮮半島における男性性の歴史を振り返りながら、戦争と兵役、社会的格差の拡大が現代の韓国の男性たちにもたらした「憂鬱さ」について、感情史として記述される。

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