「新しい封建制」の到来から私たちは逃れられない ローマ帝国末期を想起する都市衰退と人口流出

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おそらく最大の問題は、欧米諸国がこの反骨精神を汲み取り、無政府状態に陥らずに専制的な潮流を引き戻すことのできる指導者を生み出せるかどうかということであろう。

近年は、思慮分別があり、国民を鼓舞するような指導者には恵まれていない。むしろナルシシストや老いぼれども(dodderers)のオンパレードである。現在の経済構造から恩恵を受けている上流階級が、専制政治や新しい封建制への抵抗を促すような行動をとることはないであろう。

そうした動きは、権威・権力者の支配に挑戦するグループが草の根から起こすものであるにちがいない(その挑戦は組織的な場合もあれば、特定の問題に絞ってなされる場合もある)。それは、政府の理にかなった政策を拒否することを意味しない。

むしろ政策を討議する場に市民を参加させることや、政策の責任を選挙で選ばれてもいない有識者ではなく、国民に選ばれた代表者に担わせることを要求するものである。私たちの未来はこのところどうも先細りしていく気配が濃厚だが、普通のアメリカ人が自分自身と家族のためにより良いものを求める強い意志を持つならば、希望なき未来は避けられる。

自治の理念が独裁者に不安を抱かせる

そのような民主主義を維持するためには、攻撃的で拡張主義的な専制国家と国外で対決することも必要になる。

地球規模の舞台では、中国が台湾を征服し、この地上の支配的文明となる野望を抱いていたり、ロシアがソビエト帝国の再建という野望から自国民に厳しい統制を敷きつつ、ウクライナに野蛮な攻撃を仕掛けていたりと、冷戦終結後最大の自由主義的価値観への攻撃を目の当たりにしている。

欧米諸国が日本やインドと連携して、中国の挑戦に対応する準備ができているようにみえるのは驚くほどだ。ほとんどのヨーロッパ諸国は、関与の程度に差こそあれ、アメリカとともにロシアの対ウクライナ戦争に反対している。ロシアの侵略によって、ウクライナ国民のみならず、多くの近隣諸国民は、この地域で専制国家が勢力を拡大すれば、自分たちが何を失うことになるのかをはっきりと痛感させられた。

ファシズム、国民社会主義(ナチズム)、ソビエト共産主義など、専制的な帝国や体制の崩壊を私たちは過去に見てきた。自由、機会、自治に希望を抱く人びとは、しばしば多大な犠牲を払いながらも、自分たちの国の専制政治を倒すために結集した。自治の理念がどこかで息づいているかぎり、独裁者は不安を抱きつづける。また人びとが自己決定を望み、それが生得の権利であると信じているかぎり、既得特権や既成権力にたいするあらゆるかたちの挑戦がなされるであろう。

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