「新しい封建制」の到来から私たちは逃れられない ローマ帝国末期を想起する都市衰退と人口流出
一方、民主主義社会における階級間の格差はますます広がり、特権はより強固なものとなっている。階級がほぼ固定化されている現実は、今日の状況が封建時代に最も似たところである。
ただし、中世後期に強力な君主たちが台頭してくるまで封建制を特徴づけていた分権的統治は存在しない。社会的階層化が進んだ結果、中道派の政党や政治家は隅に追いやられてしまった。
たとえば、2022年6月にフランス国民議会の選挙でエマニュエル・マクロン率いる中道右派連合が絶対多数を失い、極左・極右がともに多数を占めた。有権者が二極化すれば、民主的妥協はますます困難となる。特にアメリカの二大政党制ではそれが顕著である。
労働者不足が第三身分の台頭に道を開く
歴史的には、いまも目の当たりにしているように、危機は政府の統制強化や権力集中化の口実となりうる。
しかしながら、最悪の悲劇ですら、創造的実験を刺激し、新たな機会を開き、自由の再生を促すこともある。
最もよく知られている例が、14世紀の黒死病である。この致命的な疫病により、ヨーロッパでは実におびただしい数の人びとが死に絶えた。
その当時、自分たちは「終末」の世界に生きているのだと多くの人びとが信じたのは、驚くには当たらない。アメリカの歴史家バーバラ・タックマンの言葉を借りれば、「黙示録的な空気が漂っていた」のである。
しかし、その文明の破局が労働者不足を招いたことで、労働の価値は高まり、封建制秩序は崩れ、第三身分の台頭に道を開いた。さらにはイノベーションを呼び起こし、ヨーロッパを大航海時代に向かわせ、世界の海の征服につながったのである。
ひょっとすると、現在私たちの頭上を覆う暗雲の隙間に虹がかかっているのかもしれない。新たな事業を起こし、民主主義の理想を復活させる好機が到来しているのかもしれない。実際、希望に満ちた再生の兆しが草の根レベルでちらほら見えはじめている。
新型コロナパンデミックは、中世末期の大疫病やその他の混乱と同様、人びとに困難な状況に適応し、新しい働き方や事業の継続の仕方を模索することを余儀なくさせた。業界によってそれが容易なところもそうでないところもあったが、総じて自営業者は、通常の賃金労働者や給与所得者よりもうまく苦況を切り抜け、早期に回復することができた。
パンデミックのさなか、多くのアメリカ人が起業家として再出発し、新規事業を次々と立ち上げ、その多くはオンラインワークへの移行を実現した。2021年には、数年ぶりに新規事業の立ち上げ件数が大幅に増加した。
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