「新しい封建制」の到来から私たちは逃れられない ローマ帝国末期を想起する都市衰退と人口流出
ユーラシア的性格を持つ今日のロシアは、復讐心の強い国家(レヴァンチスト)でもある。冷戦の終結によりロシアは民主主義国家に発展するという楽観的見方もかつてはあったが、プーチン政権下で独裁色が強まり、過去の帝国時代に近づきつつある。
プーチンは国内統制を強める一方で、ツァーリやスターリンの領土征服を再現して帝国の版図を拡大しようとしている。ツァーリの時代と同様、ロシア正教会はプーチンの専制支配と民族主義的侵略を祝福している。
失地回復を図る専制国家
ロシアでも中国でも、専制体制は国家の偉大さと優位の正当性を誇る感覚と密接に結びついている。サミュエル・ハンティントンが四半世紀前に示した鋭い分析によると、専制君主は世界の舞台で自らの権力を主張する正当な理由として歴史的不満を持ち出すことがあるという。
ハンティントンは、「ワールド・コミュニティー」の構成メンバーであることを鼻にかけた欧米諸国が過去に行ってきた不当な扱いが怒りを買い、他の大国が失地回復を図るべく行動に出る時代に突入しつつあると指摘した〔訳注 「このワールド・コミュニティーという言葉自体が、婉曲に(自由世界を意味する)集合名詞となり、これによりアメリカと他の西欧諸国の利益を守る行動を正当化しようとしている」(『文明の衝突』鈴木主税訳、集英社、1998年)276頁〕。
北京政府は、中華文明が何世紀にもわたって占めていた高位の座を奪還し、世界の覇権を握ろうとしている。プーチンのロシアは、ツァーリの栄光に包まれた旧ソビエト帝国の超大国としての地位を挽回しようとしている。
プーチンは西側諸国の力を侮り、少なくともウクライナの一部を服属させようと試みる一方、かつてロシアが支配していた中央アジアからベラルーシに至る周辺諸国をも視野に入れている。
北京政府は、プーチンの情け容赦ない対ウクライナ攻撃を容認する一方、アジア周辺地域で自国の力を誇示し、台湾を征服すると脅している。
これは、小国の主権を守る国際法から「力こそ正義」の世界へと歴史を逆行させるものである。ロシアも中国も、自分たちの思い描いたとおりに世界秩序をつくり変えようとしている。特に中国は、自国の社会形態が未来のかたちであると確信している。専制体制が権力と影響力を強めるにつれ、そのモデルが規範となり、既存の市場資本主義や民主主義に取って代わるおそれがある。
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