「新しい封建制」の到来から私たちは逃れられない ローマ帝国末期を想起する都市衰退と人口流出
起業家精神の高まりは、新しい封建制の亡霊に対抗するものとなる。
大都市からの人口流出も、リモート勤務をしたり、自分が選んだ居住地で起業したりする人が増えれば、良い結果をもたらすであろう。
何世紀にもわたって、都市がダイナミズムと文化的創造性の原動力であったことは事実であるが、同時に犯罪や病気を生む温床にもなってきた。COVID─19が最初に大都市で広まったことを思い出してほしい。
現在の都市は、健康・衛生上の理由に反して、また〔自家用車を持ち、戸建てに住むという〕多くのアメリカ人の嗜好とは裏腹に、公共交通機関の利用を増やし、人口の高密度化を促している。
人びとに密集した生活を強いるよりも、より分散化された経済を発展させたほうが、戸建てを持ちやすく、社交的なコミュニティーを形成しやすくなり、健康の増進や民主主義の醸成にもつながるのではないか。
21世紀の大都市からの人口流出が、世襲貴族による農民支配につながることはないであろう。
人びとは自分の好きな場所に住んで働くことができれば、より強い自立心と主体性を持ち、地域社会への貢献を高めるようになる。
行政機関、大企業への信頼度がかつてなく低下
もう一つ希望の持てる兆しは、人びとが権威・権力者の優先順位に疑問を抱くようになってきていることである。
2021年にアメリカのギャラップ社が行った調査の結果、議会や裁判所を含む行政機関、大企業やウォール街などへの信頼度がかつてなく低下していることが判明した。
アメリカ疾病対策センター(CDC)は、新型コロナパンデミックの初期には神話的ともいえる権威を獲得したが、その後は大多数のアメリカ人の信頼を失い、現在はその一般向けメッセージの大規模な見直しが行われているところである。
感染対策のロックダウンをめぐっては、アメリカのみならず、カナダなど世界各地で猛烈な抗議が繰り広げられた。怪しげな反ワクチン・イデオロギーも対立と抵抗を引き起こした。
制度や当局への不信感が蔓延すると(特にそれが暴力に至る場合には)社会をむしばむ可能性があるのは事実である。
2020年夏に起こったジョージ・フロイド氏殺害事件後の暴動がその例であり、2021年1月の米大統領選挙の結果認定日に錯乱したドナルド・トランプ支持者らが議会議事堂を襲撃した事件はおそらく最も衝撃的な出来事であった。
しかし、国民が権力者におとなしく服従するただの臣民になり下がりたくないのであれば、健全な懐疑心と発言する意志を持つことが重要である。
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