「新しい封建制」の到来から私たちは逃れられない ローマ帝国末期を想起する都市衰退と人口流出
究極的に人間は上からの恣意的な支配に喜んで服従することはない。民主的自治を再生させる余地はまだ残されている。封建制がルネサンスを経て民主主義の発展につながったように、またソビエト帝国の崩壊がその周辺に自由で豊かな国々を生んだように、今日でも民主主義を再生させることは可能である。
必要なのは、政治的・経済的な大領主(overlord)におとなしくひれ伏すことではなく、より応答性の高い統治を求める勇気と、より開かれた起業家社会を実現しようとする意志だけである。
イデオロギーや党派性の問題ではない
本書は、右派のものでも左派のものでもない。階層化(階級分化)が進み、停滞が続く社会の傾向について分析を試みるものである。
本書はまた、世界の中流階級に向けた警告の書でもある。現在、広く世界で新しい封建制へ向かう流れができており、もはや後戻りは無理かもしれないが、本書がその流れを食い止めるための議論を喚起し、行動を鼓舞する一助となれば幸いである。
長年の民主党員、現在は無所属である私には、これがイデオロギーや党派性の問題であるとは思えない。進歩派はもとより、保守派も含め、大多数の人びとが、階級の固定化や富と権力の巨大な集中からなる未来を望んでいないと信じたい。
それは、アメリカのみならず、イギリス、オーストラリア、カナダ、ヨーロッパ大陸の大部分、さらには急速に発展している東アジアの国々を含む世界的な現象である。
現地報告、とりわけアメリカ、オーストラリア、イギリス、シンガポール、インド、中国から得られる情報は、本書を完成させるうえで大いに役立った。しかしそれと同時に、過去の偉大な分析者であるアレクシ・ド・トクヴィル、カール・マルクス、マックス・ヴェーバー、ダニエル・ベル、堺屋太一、アルビン・トフラーらによるそれぞれの時代の状況認識について考えることからも大いに示唆を得られた。
地平線に見え隠れする未来は、いかなる国にとっても、また自分の子どもたちにとっても望ましい未来ではない。本書の意図するところは、過去数世紀にわたって自由民主主義の特徴であり続けた独立と自由、社会的上昇の可能性を大切に考えている人びとを結集させることにある。
(翻訳:寺下滝郎)
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