SAPIXも早稲アカも「DX戦略」なしに生き残れない 構想力が「少子化でも売上拡大」を可能にする

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学習塾で学ぶ子供たち
少子化に直面する学習塾業界も生き残りをかけてビジネスモデルを進化させる必要がある(写真:Fast&Slow/PIXTA)
学習塾業界の市場規模は9000億円台後半と推測される(矢野経済研究所調べなど)。少子化が進むものの、親が子ども1人当たりにかける教育費が増えているため、かろうじてほぼ横ばいを保っているのが昨今の状況だ。
現在、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでおり、教育業界もその例外ではないだろう。市場全体の成長が見込みにくく業界内での競争が激化する中で、学習塾(受験塾)各社は生き残りをかけてビジネスモデルを進化させる必要があるとも言える。
しかし、多くの企業がDXに取り組んでいるにもかかわらず、売上拡大につなげることができていない。新刊『デジタルマーケティングの教科書――データ資本主義時代の流通小売戦略』を上梓した牧田幸裕氏が、学習塾業界の生き残り戦略を例に「DXによる売上拡大ビジネスモデル」構想(イメージ)について解説する。

DX構想力を鍛えるフレームワーク

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IPA(情報処理推進機構)の『DX白書2023』によると、「アナログ・物理データのデジタル化」と「業務の効率化による生産性の向上」については、なんらかの「成果が出ている」とする回答が8割近くになるのに対し、「新規製品・サービスの創出」と「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」に対しては2割程度にとどまっている。

ここから言えることは、DXの取り組みにより、業務効率化でコスト削減は実現しつつあるが、売上拡大はなかなか実現できていないということだ。では、なぜ売上拡大を実現できないのだろうか。それは、「DXによる売上拡大ビジネスモデル」を構想できていないからである。

そこで、ここでは「DXによる売上拡大ビジネスモデル」をどうしたら構想できるようになるのかを検討したい。「DXによる売上拡大ビジネスモデル」構想力を鍛えるフレームワークがある。その要素は、以下のとおりだ。

1. 提案に必要な消費者行動データの収集
2. デジタルテクノロジーによる分析
3. 消費者を幸せにする提案と関係性の深化

この3要素を構築できれば、DXによる売上拡大が可能となる。なぜか。消費者は自分の行動データを提供する。すると、企業が(消費者の目線で言えばアプリが)そのデータを分析してくれ、「こうしたらよい」と提案してくれる。その提案にのると、自分で考えるよりもより良い体験をすることができる。それを繰り返すと、その企業(アプリ)の提案を消費者が信頼し、長期的な関係となる。

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