SAPIXも早稲アカも「DX戦略」なしに生き残れない 構想力が「少子化でも売上拡大」を可能にする

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縮小

このように考えると、中学受験塾、高校受験塾のDXで進化したビジネスモデルは、以下のとおりとなる。

1.  駅近のアクセスの良い立地に塾を開くことは変わらない
2. 基本的には自宅でオンライン受講なのでリアルチャネルの規模は縮小
3. 受験生一人ひとりの個別指導をアプリが行う
4. 受講生一人ひとりにカスタマイズされた動画教材を提案
5. 確認テストをアプリが自動生成

事務手続きや窓口相談、一部対面授業などは継続されるので、駅近に塾が存在するのは変わらないだろう。ただ、多数の教室が必要なわけではないので、これまで3階分賃貸していたものが1階分の賃貸で済むことになるだろう。

現在、都市銀行の支店統廃合がどんどん進んでいるが、同じような感じでリアルチャネルの縮小が進んでいくと想像できる。

塾講師の役割が「わかりやすい授業をすること」であることに変わりはない。ただ、その主戦場が、対面授業から録画動画に、すべてではないがシフトしていくと考えられる。なお、私は対面授業がすべて動画授業にシフトしていくとは考えていない。個別カスタマイズ動画授業が週3日、対面授業が週2日といった感じに変わっていくのではないだろうかと考えている。

関東圏、関西圏の進学塾では、小6、中3になると、週末含め週5日塾に通うことは珍しくない。小さな身体に相当な負担になっているだろう。対面授業がその半分になれば、受験生にとっても通学負担は減少すると考えられる。

受験生との長期的な関係も構築できる

受験生一人ひとりにカスタマイズされた動画教材が提案され、確認テストが自動生成されるので、授業を聞いていても「さっぱりわからない」ということが減少し、テストで結果を出し、受験生の受験勉強に対する姿勢も前向きになると考えられる。その前向きになった姿勢を見て、保護者も喜ぶ。これにより、受験生、保護者は、その塾を信頼し、転塾などを検討せず、その塾と長期的な関係を構築できるようになる。

いかがだろうか。これが私の構想する、中学受験塾、高校受験塾のDXで進化したビジネスモデルである。

1. 提案に必要な消費者行動データの収集
2. デジタルテクノロジーによる分析
3. 消費者を幸せにする提案と関係性の深化

この「DXによる売上拡大ビジネスモデル」構想フレームワークに従って個々の要素を検討することで、構想力を鍛えることができる。今回は教育サービスを対象に検討したが、このフレームワークは、流通小売業、製造業も対象として検討することができる。

今回は、教育サービスの具体的なイメージでDX構想力とは何かを考えてきた。次回は、フレームワークの使いこなし方について解説する。消費者行動データの収集、データの分析、分析にもとづいた提案と関係性の深化まで、それぞれの段階で何をどうすれば、このフレームワークを使いこなせるのか。次回しっかりと検討していこう。

牧田 幸裕 名古屋商科大学ビジネススクール 教授

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まきた ゆきひろ / Yukihiro Makita

1970年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、京都大学大学院経済学研究科修了。ハーバード大学経営大学院エグゼクティブ・プログラム(GCPCL)修了。アクセンチュア戦略グループなどを経て、2003年日本IBM(旧IBMビジネスコンサルティングサービス)へ移籍。インダストリアル事業本部クライアント・パートナー。IBMでは4期連続最優秀インストラクター。2006年信州大学大学院経済・社会政策科学研究科助教授。2007年准教授。2018年より現職。名古屋商科大学では5年連続ティーチング・アウォード受賞。著書に『デジタルマーケティングの教科書――5つの進化とフレームワーク』(東洋経済新報社)などがある。

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