「釜山国際映画祭」に見る韓国映画界の現在地 韓国映画の大ヒットは出にくくなっている

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そんな韓国映画不振の背景の1つには、作品内容のマンネリ化があるだろう。ここ最近では、中東で拉致された同胞の救出劇を描く作品がいくつもあったが、1つヒットすると似たようなテーマや題材の大作が次々と出てくるのが韓国映画界の特徴だ。そこに対して、マンネリ感を覚える、デジタルネイティブ世代の価値観の変化が表れているのかもしれない。

しかし、自国の映画市場が冷え切っているにもかかわらず、今年の釜山国際映画祭には若い世代を中心にした多くの観客が会場につめかけていた。

プレミア上映のチケットはほとんどが発売開始と同時に完売。ほかの上映作品でもソールドアウトが多く、上映はどこもほぼ満席だった。チケットブースにはキャンセル席の表示を見に来る観客の姿が目立ち、映画祭はコロナ前を思わせるほどの盛況ぶりだった。

韓国はもともと映画好きが多い

今回の盛況ぶりには、もともと韓国には映画好きが多い、といった背景もあるのだろう。世界の映画祭で評価された新作や韓国公開未定の有名外国監督の新作、国内公開前の話題作を見るために映画祭に足を運ぶ。そこに新しいなにかを求めているから。映画に対する健全なモチベーションはしっかりと働いていることがわかる。

韓国でも日本と同様に、ティーンをはじめとする若年層の映像コンテンツの視聴スタイルや接触するメディアの変化があると言われている。ただ、韓国では若者たちにも映画を見る文化が強く根付いていることが、今回の映画祭から感じられた。そしてそこには、先に述べたように日本映画へのニーズもしっかりと存在している。

振り返って日本市場を見ると、100億円超えの大ヒットが生まれてはいるものの、アニメの大作のヒットばかりが目立っている。有名監督の作品でさえ大ヒットにはつながらず、独立系の小規模作品では、製作資金を集めるのが難しいのが現状だ。

であれば、韓国との共同制作に軸足を移してみるのも1つの手法かもしれない。『第75回カンヌ国際映画祭』でソン・ガンホが男優賞を受賞した是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』は韓国映画であり、すでにそういった動きもある。

復興しつつある釜山国際映画祭の熱気と、日本映画への関心と評価の大きさを見ると、日本映画の未来の発展のためには、韓国映画界とのつながりをより強めていくことが1つの手法としてあるのではないか。イチ映画ファンとしては、そうすることで、日本映画界も今まで以上にヒットを生み出すことができるのではないかと感じている。

武井 保之 ライター

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たけい・やすゆき / Takei Yasuyuki

日本およびハリウッドの映画シーン、動画配信サービスの動向など映像メディアとコンテンツのトレンドを主に執筆。エンタテインメントビジネスのほか、映画、テレビドラマ、バラエティ、お笑い、音楽などに関するスタッフ、演者への取材・執筆も行う。韓国ドラマ・映画・K-POPなど韓国コンテンツにも注目している。音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク系専門誌などの編集者を経て、フリーランスとして活動中。

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