「釜山国際映画祭」に見る韓国映画界の現在地 韓国映画の大ヒットは出にくくなっている

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伝説のドキュメンタリー『ゆきゆきて、神軍』(1987年)で韓国でも知られる原一男監督は、本映画祭ドキュメンタリー部門の審査員を務める。

会場となった300席を超えるKNNシアターは満席となり、3分の1ほどを20代と見られる若い層が占めた。2時間のイベントの最後30分の質疑応答で挙手をしたのは、全員が20〜30代の映画界の未来を担う世代。つねに10人以上が手を挙げる熱気に包まれたなか、原一男監督は熱心な若者たちの質問や意見に丁寧に答えていた。

釜山国際映画祭 韓国
伝説のドキュメンタリー監督・原一男氏のトークイベントには若い世代の観客が多く詰めかけた (写真:BIFF2023提供)

今年のコンペティションでは、ニューカレンツ部門に選出された『福田村事件』(森達也監督)が同部門の最優秀作品賞を受賞。映画祭最終日の授賞式に登壇した森監督は韓国上映への期待を語り、大きな拍手が送られた。

日本映画の人気に加え、特徴的だったのは、インドネシアの映画市場の熱気だ。映画祭と併催されたアジア最大のコンテンツマーケット『アジアコンテンツ&フィルムマーケット(ACFM)』のビジネスセッションでは、インドネシアにフォーカスするプログラムが複数組まれていた。

実はインドネシアは国を挙げてエンタメ産業に力を入れている。インドネシアの教育・文化・研究・技術省の担当者が出席したトークセッションでは、政府が2016年から映画産業を支援しており、この2年でスクリーン数が大きく増え、次の5年のビジョンに向けてさらに整備を進めていると述べた。

また、同国の映画プロデューサー、監督とともに、国内市場の拡充とともに国際共同制作に力を入れていくこともアピール。国の後ろ盾があることを含めて、まだ世界に知られていないインドネシア映画の国際配給や、制作アライアンスへの参画と出資を参加者たちに強く訴えた。

大ヒットが生まれず冷え込む韓国市場

一方開催国である、今年の韓国映画市場はどうだったのか。100億円超えのヒット作が続く日本市場とは対照的に明るい話題が少ない。

これまで韓国映画は『パラサイト 半地下の家族』の『第92アカデミー賞』作品賞、監督賞含む最多4部門受賞や『第72回カンヌ国際映画祭』パルム・ドール受賞といった世界的評価のほか、ドラマでは『愛の不時着』『梨泰院クラス』『イカゲーム』などが世界的ヒットとなり、韓国映像作品の人気と価値を世界レベルまで一気に引き上げていた。

ところが2〜3年経った今、それに続く世界規模のヒット作が生まれていない。とくに今年は韓国国内に目を向けると、前半で大ヒットしたのは1月公開の『THE FIRST SLAM DUNK』と3月公開の『すずめの戸締まり』という日本アニメのみ。

韓国映画で観客動員1000万人を超えた映画は、今年はまだ『犯罪都市3』の1本のみで、自国映画の大ヒットが出ないことに危機感を覚える関係者は多い。

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