各国も警戒、日本の「中国人留学生スパイ」の実態 悪意なき学生を利用するアメとムチの手口

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

日本には、スパイ活動を展開する中国人留学生の拠点(組織)が多数あると見られている。前述した留学生団体や同窓会、それらを統括する中国大使館や領事館、孔子学院も同様だ。

中でも孔子学院は、中国政府が世界各国の大学などに非営利教育機構として設置を進めていたもので、中国共産党が運営するスパイリクルート機関・プロパガンダ(政治宣伝)機関であるとの指摘が相次いでいる。日本では、早稲田大、立命館大、桜美林大、武蔵野大、愛知大、関西外国語大、大阪産業大、岡山商科大、北陸大、福山大、山梨学院大、立命館アジア太平洋大、札幌大の13大学で設置が確認されている。

孔子学院では、中国人留学生をスパイとして採用していると指摘されている。孔子学院の活動を通じて、中国に都合の良い情報のみを孔子学院の参加者に与え、感化し、親中派を拡大する宣伝工作を行っているのだ。

このほか、間接的な関与も含めればキリがない。これが日本における留学生のスパイ拠点の実情である。

カウンターインテリジェンスの重要性

中国のスパイが日本に数万~数十万人いるとのネット記事もあるが、前述のように悪意なく又は強制されたうえで利用されている状況があることに十分留意しなければならず、やや暴論であろう。

元CIAのカウンターインテリジェンス分析官であったピーター・マティス氏も「中国のスパイ活動は階層的に行われており、情報収集の重要なチャネルとして素人を活用しているが、その多くは中国の諜報機関によって管理・計画されている」と述べている。

筆者は、中国人留学生を目の前にして同じ話ができるだろうかと自問自答することがある。差別に繋がってしまうのではないかと恐怖を覚えることもある。

しかし、ここまで述べた内容は、日本に対する脅威でありリスクである。中国人留学生によるスパイ活動について、日本においてどれだけの人がこの危険性を認識しているだろうか。悪意なく、手先として使われている場合が多くあると理解したうえで、どうかスパイ活動に対する危機意識を醸成していただきたい。

日本にはスパイ防止法がないため罰則が軽く、起訴されたところで執行猶予となるケースも少なくない。スパイ活動が日本では多く行われていると認識しなければならない。

また、政治中枢や世論に食い込む影響力工作も忘れてはならない。こちらのほうが深刻だろう。

まず、社会において危機意識を向上させることが、日本のカウンターインテリジェンス(防諜)の向上につながる。

稲村 悠 Fortis Intelligence Advisory株式会社代表取締役

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いなむら ゆう / Yu Inamura

Fortis Intelligence Advisory株式会社代表取締役、(一社)日本カウンターインテリジェンス協会代表理事、外交安全保障アカデミー「OASIS」講師。1984年生まれ。東京都出身。大卒後、警視庁に入庁。刑事課勤務を経て公安部捜査官として諜報事件捜査や情報収集に従事。警視庁退職後は、不正調査業界で活躍後、大手コンサルティングファーム(Big4)にて経済安全保障・地政学リスク対応に従事した。その後、Fortis Intelligence Advisory株式会社を設立。経済安全保障対応や技術情報管理、企業におけるインテリジェンス機能構築などのアドバイザリーを行う。また、一社)日本カウンターインテリジェンス協会を通じて、スパイやヒュミントの手法研究を行いながら、官公庁(防衛省等)や自治体、企業向けへの諜報活動やサイバー攻撃に関する警鐘活動を行う。メディア実績多数。著書に『企業インテリジェンス』(講談社)、『防諜論」(育鵬社)、『元公安捜査官が教える 「本音」「嘘」「秘密」を引き出す技術』(WAVE出版)。
X: https://twitter.com/yu_inamura_spy
公式サイト: https://www.japancia.com/

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事